規制化学物質一覧

     当センターは、世界の様々な国/地域の化学物質規制や、各社の制限化学物質リスト(RSL:Restricted Substances List)に対応した試験サービスを提供しています。対応法令および規格、試験対応物質の一例は下記の通りです。

     

    対応法令および規格

    ・有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(日本)

    ・食品衛生法(日本)

    ・GB 18401 国家繊維製品基本安全技術規範(中国)

    ・GB 31701 乳児用および子供用繊維製品安全技術規範(中国)

    ・GB 20400 皮革および毛皮 有害物質限量(中国)

    ・CNS 15290 紡織品安全規範(台湾)

    ・子供製品安全特別法(韓国)

    ・電気用品および生活用品安全管理法(韓国)

    ・CPSIA(Consumer Product Safety Improvement Act:消費者製品安全性改善法)(米国)

    ・REACH規則、Regulation (EC) No 1907/2006(EU)

    ・POPs規則、Regulation (EU) 2019/1021(EU)

     

    対応物質
             

    ビスフェノール 類
    (BPA/BPS)

     

     

     

     

     

     

     

    ホルムアルデヒド

     ホルムアルデヒドは、シャツ等の防しわ加工や防縮加工、顔料プリント、接着剤、皮革のなめし加工などの広い用途で使用されます。発がん性や、皮膚や呼吸器への刺激性が懸念されており、日本をはじめとする世界各国でその使用が規制されています。

     

    特定芳香族アミンおよびアゾ染料

     アゾ染料は繊維製品や皮革製品の染色に広く用いられる染料です。日本、EU、中国、台湾、韓国、ベトナム、インドネシア、オーストラリア、インド等の多くの国で、発がん性のある芳香族アミンを生じる恐れのあるアゾ染料の生産や使用が規制されています。

     

    カドミウム

     カドミウム化合物は、主にイエローやオレンジ、赤の着色剤として、衣類や雑貨、アクセサリー等のプラスチック製付属品に用いられることがあります。また、ポリウレタン樹脂やポリ塩化ビニル樹脂の安定剤として、それらでコーティングした生地や皮革、合成皮革等に含まれることがあります。 カドミウムが人体に蓄積されると腎臓等に健康被害を及ぼすことが知られており、中国や韓国、台湾、EU等では、繊維製品のコーティングや顔料プリント、プラスチック製品やジュエリー製品等への使用が規制されています。

     

     鉛は合金や塗料、着色顔料の成分として、またポリマー材料の安定剤として使用されることがあります。日本では、2006年に東京都より「金属製アクセサリー類等に含有する重金属類の安全性に関する調査」結果が公表され、金属製アクセサリー類等については製品中の鉛含有の状況の把握や鉛含有の低減策の推進、鉛を含有する旨や子供の誤飲防止に係る注意表示の実施が要請されています。鉛を含有する金属製やプラスチック製の小さな付属品の誤飲による死亡事故や健康被害が世界中で報告されており、特に事故の多い子供用品については中国や韓国、米国やカナダ、EU等においても厳しく規制されています。

     

    ニッケル

     欧州では、10~20%の女性と1~3%の男性はニッケルアレルギーであると言われており、接触性アレルギーの主な原因物質であると考えられています。例えば、ピアスのように肌に直接・長時間接する製品から汗等にニッケルが溶け出し、それを皮膚が吸収することにより皮膚感作が起こります。EUや韓国では、イヤリングやネックレス、ブレスレット、指輪などのアクセサリー類や腕時計、さらに衣類のリベットやボタン、ジッパー等の長時間肌に触れる可能性のある金属製品に対し、ニッケル溶出量の基準値を定めています。

     

    水銀

     水銀は水俣病の原因物質(有機水銀)として知られ、身近なところでは体温計や蛍光灯などに使われてきました。また顔料、塗料などにも使われ、殺虫剤などにも含まれることがあります。

     水銀及び水銀化合物の人為的な排出から人の健康及び環境を保護する目的で、水銀の採掘、貿易、製品や製造プロセスへの使用、排出等を包括的に規制する目的で2013年10月に「水銀に関する水俣条約」が採択されました。これにより世界的に水銀の使用が規制されています。

     

    六価クロム

     六価クロムは、天然皮革や再生皮革品から検出されることがあります。現在、皮革の鞣し加工において最も用いられる方法がクロム鞣しであり、クロム鞣しには安全性の高い三価クロムが用いられます。この鞣し加工で適切な処理がされないと、三価クロムが酸化され六価クロムを生成し、皮革材料に残存することがあります。六価クロムは発がん性や、直接肌に触れると皮膚障害を引き起こすことで懸念されており、EUや韓国で皮革製品に規制値が定められています。

     

    有機スズ化合物

     有機スズ化合物は、塩化ビニル樹脂の熱安定剤や、ポリマー材料の合成における触媒として使用されることがあります。また、殺生物剤として、塗料や繊維・皮革材料の保存剤に使用されることがあります。いくつかの有機スズ化合物は、排出され環境中に残留することによる水性毒性や、人体に対する生殖毒性や胎児への有害性が懸念されており、日本をはじめとする世界各国でその使用が規制されています。

     

    アルキルフェノール(AP)およびアルキルフェノールエトキシレート(APEO)

     アルキルフェノールエトキシレート(APEO)は、繊維製品加工における界面活性剤や乳化剤として、洗剤やプリントペースト中に使用されることがあり、EUや台湾、韓国等で繊維製品への使用や残留濃度に規制値が定められています。アルキルフェノールエトキシレート(APEO)は環境中でアルキルフェノール(AP)に分解されることが知られており、その水性毒性が懸念されています。また、人体に対しては生殖毒性や胎児への有害性が懸念されています。

     

    塩素化フェノール類

     塩素化フェノールは、天然繊維や皮革の保存剤や防カビ剤として、また、プリントペーストや塗料の保存剤として使用されることがあります。非常に毒性が強く、発がん性や中枢神経異常、生殖毒性や内臓への健康被害が懸念されています。EUや韓国では、塩素化フェノールの1種であるペンタクロロフェノール(PCP)の使用が規制されています。

     

    フマル酸ジメチル(DMFu)

     フマル酸ジメチルは、皮革製品の防かび剤として用いられることがあります。過去に欧州のいくつかの国で、フマル酸ジメチルを含有していた皮革製の家具や履物による重大な皮膚障害事故が起きたために、今ではその使用が規制されています。また、韓国でも同様に皮革製品への使用が規制されています。皮革製品以外には、皮革製品等の包装箱に入れるシリカゲルのような乾燥剤に防かび剤として添加されていることがあります。皮膚に触れると難治性の皮膚障害を起こす、リスクの高い化学物質として知られています。

     

    難燃剤

     難燃剤は、材料や製品を燃えにくくするために添加する化学物質で、ホームファニシングやスリープウェア等に用いられることがあります。難燃剤のうち、一部の臭素系難燃剤や塩素系難燃剤は、発がん性や環境中での難分解性が懸念されています。ポリ臭素化ジフェニルエーテル類等の複数の難燃剤は、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約において廃絶対象とされており、日本をはじめとする世界各国でその生産や使用が規制されています。

     

    ジメチルホルムアミド(DMFa)

     ジメチルホルムアミドは、繊維製品や合成皮革のコーティング等に広く使用されるポリウレタン樹脂の加工に用いられる有機溶剤です。EUではその生殖毒性が懸念されており、古くからREACH規則のSVHC(高懸念物質)に分類されていましたが、2018年にはAnnex XVIIの制限物資リストに追加され、その残留濃度に基準値が設けられました。

     

    キャリヤー染色用有機溶剤

     分散染料によるポリエステル等の染色は通常、高温高圧下で行いますが、耐熱性の低い繊維と混紡したり、染色コストを下げたりする目的で、高温高圧下での染色を行わない場合があります。その際、染色助剤としてキャリヤー剤を用いることがあります。キャリヤー剤はポリエステル等の繊維を膨潤させる作用があり、その作用により比較的低温下での染色を可能にします。このキャリヤー剤のうちのいくつかの化学物質 は、発がん性や皮膚感作性が懸念されており、EUでは3種のクロロトルエン類に規制値が定められています。

     

    PFAS(有機フッ素化合物)

     有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物を総称して「PFAS」と呼び、1万種類以上に及ぶ物質があるとされています。PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)およびPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)は、優れたはっ水性、はつ油性から繊維製品においても幅広く使用されてきました。これらの有機フッ素化合物は、非常に安定性が高く、その難分解性から“永遠の化学物質”とも呼ばれ、世界的に規制の動きが進んでいます。

     日本においては、PFOS/PFOA/PFHxSが化審法 第1種特定化学物質に指定され、原則使用禁止されています。また、米国ではカリフォルニア州を始めとしたいくつかの州において、全てのPFASを規制する州法が制定されるなど急速に規制が強化されています。

     

    フタル酸エステル類

     フタル酸は、プラスチック材料の可塑剤として、プラスチックを柔らかくしたり屈曲性を増させたりするため、また、ひび割れ防止や成型時の融点を下げるために添加されます。可塑化されたプラスチックは、玩具や育児用品、バッグや履物、衣類等のコーティングやプリント等に広く使用されています。一部のフタル酸は生殖毒性や発がん性、胎児への有害性が疑われており、特に子供が口にする可能性のある製品については、フタル酸が溶け出し経口摂取するリスクがあるため、日本や中国、香港、台湾、韓国、シンガポール、米国、カナダ、EU等で玩具や育児用品を中心にその使用が規制されてきました。2019年のREACH規則の改正では、規制の対象範囲を玩具や育児用品のみでなく、皮膚と長時間接触する可能性のある全ての製品へと拡大されました。

     

    多環芳香族炭化水素(PAHs)

     多環芳香族炭化水素は、タールや原油に含まれている物質で、ゴムやプラスチック材料の着色や増量、可塑の目的で使用されます。また、カーボンブラックのような黒色顔料の不純物として含まれることもあります。発がん性や生殖毒性が懸念されており、EUでは肌や口腔に接する可能性のある製品への使用が規制されています。

     

    短鎖塩素化パラフィン(SCCP)

     短鎖塩素化パラフィンは、生地の難燃剤や皮革加工における加脂剤として使用されることがあります。また、プラスチックの可塑剤として用いられることもあります。難分解性や生体蓄積性の高さから、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約では廃絶対象とされており、日本をはじめとする世界各国でその生産や使用が規制されています。

     

    オルト-フェニルフェノール(OPP)

     オルト-フェニルフェノール(OPP)は、殺生剤としての特性があるため皮革の防腐剤として使用されたり、ポリエステル等の染色助剤としての用途があります。多くのブランドやいくつかの自主基準で、最終製品のOPP濃度が制限されています。

     

    紫外線吸収剤/安定剤

     紫外線により劣化するのを防ぐため、プラスチック製品などでは紫外線吸収剤が広く用いられています。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は環境中で分解されにくく、鳥や魚などの体内に蓄積しやすい性質があり、多くの生物体内から検出されるなど汚染の広がりが懸念されています。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は欧州REACH規則において高懸念物質(SVHC:Substances of Very High Concern)に分類されおり、繊維製品においても使用を制限・禁止する動きが活発化しています。

     

    ビスフェノール 類(BPA/BPS/BPB/BPF/BPAF)

     ビスフェノール A(BPA)はエポキシ樹脂やポリカーボネートの原材料、難燃剤、塩化ビニルの製造時に使用されることがあります。発がん性や生殖毒性や急性毒性などの有害性が懸念されており、日本ではポリカーボネート製の器具及び容器包装について食品衛生法で規制されています。また、代替物質であるBPS等の関連物質も同様に規制され始めています。