Proposition 65

     カリフォルニア州プロポジション65(正式名称:Proposition65 Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act of 1986)は、カリフォルニア州の市民および飲料水資源を、ガン、先天異常または他の生殖毒性を引き起こすことが知られている化学物質から保護することを目的とした法令です。
     リストに掲載された化学物質に作業者や消費者がばく露する可能性があることを事業者が知っている、もしくは知っているべきである場合に、事業者が事前に警告(告知)することを義務付けています。そのため事業者は、以下のどちらかの対応をしなければなりません。

    • 製品等に警告ラベルを貼り付ける
    • これらの化学物質にばく露しない、もしくはばく露しても安全なレベルである事を確認する
       

    対象化学物質
     カリフォルニア州が決定した発がん物質および/または生殖毒性物質であることが知られている化学物質をリスト化して公表しています。
     リストは少なくとも1年に1回更新され、2022年11月現在、約1000種類近くに及ぶ化学物質が掲載されています。
     最新のリストは  OEHHA (カリフォルニア州環境保護庁有害物質管理局)のホームページをご確認ください。
     

    警告表示

     警告文には次のようなルールが定められています。

    • 警告の対象となる化学物質の名称を含まなければならない。
    • 警告文に複数の異なる健康被害を記載する場合、どの化学物質がどの健康被害を引き起こすのか明確に消費者に伝わるよう、その原因となる化学物質の名前を文中に示さなければならない。
    • 警告文の" WARNING "の文字は、太字の大文字で記さなければならない。
    • 警告文の冒頭には、太い黒線で囲った黄色い正三角形に黒い「!」マークを入れたシンボルマークを表示しなければならない。
    • 警告表示には、指定の簡略表示がオプションとして許可される。
    • 警告表示の文字サイズは、その他の商品説明に使用された文字のうち最大のものより小さくてはならない。 また、いかなる場合においても使用する文字のサイズは6ポイント未満であってはならない。
    • インターネットまたはカタログ上で製品を販売する場合においても、警告表示が必要である。
       

    ~警告表示文の例~
    【発がん物質の場合】

    " WARNING " Consuming this product can expose you to chemicals including [〇〇〇〇〇※1], which is [are] known to the State of California to cause cancer. For more information go to www.p65warnings.ca.gov/products/food

    【生殖毒性物質の場合】

    " WARNING " Consuming this product can expose you to chemicals including [〇〇〇〇〇※1], which is [are] known to the State of California to cause birth defector or other reproductive harm. For more information go to www.p65warnings.ca.gov/products/food

    ※1:〇〇〇〇〇の部分には該当する化学物質名を記載します。

     また警告表示の要求事項は次のような場合には適用されません。

    • 連邦法が州の権限を控除するかたちで警告を管理する場合
    • 化学物質が最初に知事リストに掲載されてから12カ月以内に行われる場合
    • 癌を引き起こすことが知られている物質について「問題となるレベルで生涯ばく露すると推定しても重大なリスクを有さない」ばく露または「生殖毒性を引き起こすことが知られている物質について、問題のレベルの1000分の1でばく露すると仮定したときに、目に見える影響がない」場合
    • ばく露が、食物中の天然に存在する化学物質に対するものである場合

     但し、訴訟になった場合には、これら例外規定に該当するものであることを製造者側が証明しなければなりません。しかし実際にこれを証明することは高額な費用や時間がかかり非常に難しいのが現実です。


    60-DAY NOTICE

     Proposition 65において「60 DAY NOTICE」という言葉がよく聞かれます。
     化学物質へのばく露の危険性があるにもかかわらず、適切な警告表示がなされていない場合、製造業者側に訴訟を起こすことができます。訴訟を起こす場合には、製造業者宛に違反に対する 60 DAY NOTICE を送付します。
     企業側は60日の期間中に和解に応じるか、訴訟で争うかなどの対応に迫られます。
     60 DAY NOTICE の発出件数は年々増加しており、ある種の賞金稼ぎに利用されているといった一面もあるように言われています。


    科料と罰金

    • 1日あたりのばく露あたり2,500USドルの罰金を科すことができます
    • 示談1件あたりの平均コストはおおよそ65,000USドル
    • 科料と罰金は州と原告の間で折半されますが、原告は弁護士費用と損害費用を裁判所に申し立てることができます

     大規模な製造業者や小売業者の場合では、1,000,000USドルを超える規模になるような事例もあります。

    ◎この法律で最も重要なのは、
    リストアップされた化学物質の使用禁止や製品への含有量を規制するものではなく、有害な化学物質に暴露する危険性がある場合に適切な警告表示を義務付けたものであるという点です。