抗ウイルス性・繊維製品(JIS L 1922・ISO 18184)

概要

 繊維製品の抗ウイルス効果を評価する試験です。


試験対象品
  • 繊維製品
JIS L 1922(ISO 18184)
概要

 「Textiles -- Determination of antiviral activity of textile products」(繊維-繊維製品の抗ウイルス活性の求め方)と定義されています。繊維製品上に付着したウイルスの感染価(細胞感染性を持つウイルス粒子の数)が減少する度合いを確認します。

試験方法
  1. 試料(抗ウイルス加工品および標準布)にウイルス液を接種します。
  2. 25℃で2 時間静置します。
  3. 培地を用いて、試料に付着したウイルスを洗い出します。
  4. 洗い出した液を段階希釈し、プラーク法によりウイルス感染価を測定します。
  5. 次式により抗ウイルス活性値を算出し、抗ウイルス性能を評価します。
    Mv = log(Va)-log(Vc
     Mv: 抗ウイルス活性値
     log(Va): 接種直後の標準布のウイルス感染価(PFU/ 試験片)の常用対数
     log(Vc): 2 時間静置後の抗ウイルス加工品のウイルス感染価(PFU/ 試験片)の常用対数

※プラーク法

 ウイルスに感染した細胞が変性することを利用したウイルス量の測定方法です。

  • サンプルに付着したウイルスをSCDLP 培地で洗い出します。
  • 6穴プレートに単層培養した宿主細胞へ段階希釈した洗い出し液を接種します。
  • 6穴プレートに寒天培地を入れて培養し、プラークを形成させます。
  • 培養後のプレートを染色し形成したプラークを計数し、希釈倍率を乗じてプラーク形成単位(PFU:Plaque Formation Unit)を測定します。
  • このとき、ウイルスの感染により宿主細胞が損傷を受けている場合は色素を維持しないため、プラークは白い斑点として現れます。

プラークが形成した6穴プレート
試験結果の見方

ISO 18184 の附属書G(参考) 、SEKマーク繊維製品認証基準では基準値が設定されています。

規格・基準 抗ウイルス活性値Mv 効果の説明
ISO 18184 Annex G 3.0>Mv≧2.0 Small effect
Mv≧3.0 Full effect
SEKマーク繊維製品認証基準 Mv≧3.0
補足

 評価の対象ウイルス・宿主細胞は以下の通りです。

A型インフルエンザウイルス (H3N2) ATCC VR-1679

宿主細胞:MDCK細胞 ATCC CCL-34

 
ウイルス感染前のMDCK細胞 ウイルス感染後のMDCK細胞


ネコカリシウイルス (F-9株) ATCC VR-782

宿主細胞:CRFK細胞 ATTC CCL-94

ウイルス感染前のMDCK細胞   ウイルス感染後のMDCK細胞

  

コラム

 ウイルスとは、核酸であるDNA、RNAの遺伝子とその周りにあるタンパク質の殻で構成されており、更にエンベロープという脂質に包まれているものもあります。エンベロープがあるものの代表例として、インフルエンザウイルスがあり、エンベロープがないものの代表例としてはノロウイルスがあります。

 ウイルスは自己増殖ができず、宿主細胞と呼ばれる動物などの細胞に感染して増殖していきます。

JIS L 1922(ISO 18184)準用
(新型コロナウイルス対応)
試験方法

 試験操作等はJIS L 1922(ISO 18184)に準じ、試験片に接種するウイルス液に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を用いた方法です。

新型コロナウイルスを接種した宿主細胞の状況

 接種直後  接種24時間後 接種48時間後
補足
 当センターでは、感染症法(法律第114号:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)で定められた設備および運用に基づいて安全に作業しております。