抗ウイルス性・光触媒加工材料(JIS R 1706/ 紫外線)

概要

 光触媒を含む抗ウイルス加工材料の抗ウイルス性を、実使用環境に近い条件で評価します。ここでは「JIS R 1706 ファインセラミックス – 光触媒材料の抗ウイルス性試験方法 – バクテリオファージQβを用いる方法」を紹介します。

試料の種類によって2種類の方法を使い分けます。

試験方法 試料の種類 試料の形状
フィルム密着法 光触媒抗ウイルス加工を施した平板状材料 平板状、厚さ10mm以内
ガラス密着法 光触媒抗ウイルス加工を施した繊維状材料 ガラスで密着できる厚さ(厚すぎる場合試験不可)

ウイルス:両方法ともバクテリオファージQβを用います。
(バクテリオファージとは、細菌に感染するウイルスの総称)
 

紫外線照射強度の目安

 JIS R 1706 では紫外線強度の目安として、以下の数値が記載されています。加工の種類、使用環境等に適した紫外線放射強度をご指定下さい。なお、紫外線放射照度が強すぎると、それだけで細菌の増殖が抑制される場合があるため、強い紫外線放射照度による試験は推奨できません。

紫外線放射照度 代表的な場所
0.25mW/cm2 昼間の窓際、光触媒機能を作用させるために使用される光源などを使う場合
0.10mW/cm2 昼間の室内(太陽光が入る窓から1.5m程度内側まで)、朝又は夕方の窓際
0.01mW/cm2 昼間の室内(太陽光が入る窓から3m程度内側まで)
0.001mW/cm2 太陽光が入らない昼間の室内、夜間の室内(蛍光灯の紫外線)

JIS R 1706:2020 9.6 b) より(JIS R 1702:2020 表2)(表は当センター作成)


フィルム密着法
対象製品
  • タイル
  • プラスチック製品
試験方法
  1. シャーレに調湿用ろ紙を置き、滅菌水を適量入れます。
  2. 調湿用ろ紙の上にガラス棒を置き、50±2mm角の試験片をガラス棒の上に設置します。試験片は、加工品及び無加工品ともに実施します。
  3. 0.15mLの試験液を試験片に滴下し、滴下面に40±2mm角の密着フィルムで被覆します。
  4. シャーレを保湿用ガラスで覆い、25±3℃環境下で規定する紫外線を4時間照射します。
  5. 4項とは別に、1~3項の操作をしたシャーレを25±3℃環境下で暗所に4時間保管します。
  6. 試験片上の試験液を洗い出し、感染価を測定し抗ウイルス活性値を以下の通り算出します。


紫外放射照度Lで光照射した光触媒抗ウイルス加工材料による抗ウイルス活性値(VL
VL=log(BL/A)-log(CL/A)=log(BL/CL)

L:紫外放射照度(mW/cm2)

A:無加工試験片の接種直後の3個の試験片の感染価の平均値(pfu)

BL:無加工試験片を紫外放射照度Lで光照射した後の3個の試験片の感染価の平均値(pfu)

CL:光触媒抗ウイルス加工した試験片を紫外放射照度Lで光照射した後の3個の試験片の感染価の平均値(pfu)


光触媒抗ウイルス加工材料の光照射による抗ウイルス活性値(ΔV

ΔV=log(BL/CL)-[log(BD/A)-log(CD/A)]=log(BL/CL)-log(BD/CD)
BD:無加工試験片を暗所に保存した後の3個の試験片の感染価の平均値(pfu)
CD:光触媒抗ウイルス加工した試験片を暗所に保存した後の3個の試験片の感染価の平均値(pfu)


注)pfu(Plaque Forming Unit):一定容量当たりのプラークを形成できるウイルス粒子の数を表す単位

試験結果の見方

 JIS R 1706による試験結果の基準値は下表の通りです。

規格 基準値

光触媒工業会

(PIAJ製品認証マーク)

VL≧2.0

V≧0.3

ガラス密着法
対象製品
  • 生地
  • 繊維製品
試験方法
  1. シャーレに調湿用ろ紙を置き、滅菌水を適量入れます。
  2. 調湿用ろ紙の上にガラス棒を置き、その上に55~60mm角のガラス板を載せます。
  3. 50±2mm角の試験片をガラス板の上に設置します。試験片は、加工品及び無加工品ともに実施します。
  4. 0.15mLの試験液を試験片に滴下し、滴下面にガラス板をかぶせ密着します。
  5. シャーレを保湿用ガラスで覆い、25±3℃環境下で規定する紫外線を4時間照射します。
  6. 5項とは別に、1~4項の操作をしたシャーレを25±3℃環境下で暗所に4時間保管します。
  7. 試験片上の試験液を洗い出し、感染価を測定し抗ウイルス活性値を以下の通り算出します。


紫外放射照度Lで光照射した光触媒抗ウイルス加工材料による抗ウイルス活性値(VL
VL=log(BL/A)-log(CL/A)=log(BL/CL)

L:紫外放射照度(mW/cm2)

A:無加工試験片の接種直後の3個の試験片の感染価の平均値(pfu)

BL:無加工試験片を紫外放射照度Lで光照射した後の3個の試験片の感染価の平均値(pfu)

CL:光触媒抗ウイルス加工した試験片を紫外放射照度Lで光照射した後の3個の試験片の感染価の平均値(pfu)


光触媒抗ウイルス加工材料の光照射による抗ウイルス活性値(ΔV

ΔV=log(BL/CL)-[log(BD/A)-log(CD/A)]=log(BL/CL)-log(BD/CD)
BD:無加工試験片を暗所に保存した後の3個の試験片の感染価の平均値(pfu)
CD:光触媒抗ウイルス加工した試験片を暗所に保存した後の3個の試験片の感染価の平均値(pfu)


注)pfu(Plaque Forming Unit):一定容量当たりのプラークを形成できるウイルス粒子の数を表す単位

試験結果の見方

 JIS R 1706による試験結果の基準値は下表の通りです。

規格 基準値

光触媒工業会

(PIAJ製品認証マーク)

VL≧2.0

V≧0.3

コラム

光触媒って?

 光触媒は、光を吸収して活性化し、有機物を分解するなどの機能を持った材料です。基材に光触媒材料を担持・塗布することで、大気・水質浄化、脱臭、防汚、抗菌防臭、抗ウイルスなどの効果を発揮します。