汗堅ろう度試験(JIS L 0848)

概要

 「汗堅ろう度試験」とは、汗の作用による「色の変化の程度(変退色)」と「重ね着した他のシャツなどへの色移りの程度(汚染)」を評価するものです。
 人間の汗には様々な成分が含まれています。それらの成分と体温の熱等の作用により、染色された衣料品の色が変わったり下着などに色移りすることがあります。特にゴルフやテニスなどのスポーツをした時、脇の下などにベットリと汗をかき、プレイ後にシャツを脱ぐと下着に色がついてしまったような経験はありませんか?これは、汗の作用によりシャツの色が下着に移ってしまったからです。


試験対象品
  • 衣料品
  • マフラー
  • ネクタイ
  • 帽子
  • 靴下
試験方法
  1. 試料に2種類の添付白布を取り付けて「複合試験片」を作ります。複合試験片は酸性用と、アルカリ性用とをそれぞれ用意します。
  2. 酸性の人工汗液、アルカリ性の人工汗液をそれぞれ作ります。それぞれの人工汗液に、複合試験片を浸します。
  3. ときどき複合試験片を押しつけて、人工汗液を複合試験片にしみこませます。
  4. 30分たったら取り出して、プラスチック板と複合試験片をサンドイッチのように交互に挟み込んで荷重を加え「汗試験機」に取り付けます。汗試験機にはネジが付いており、加えた荷重が保たれます。これを温度37℃で4時間、乾燥機に入れます。
  5. 複合試験片を一枚ずつ取り出して乾燥させます。
  6. 乾いた試験片の変退色と汚染をグレースケールで判定し、堅ろう度の数値を決めます。

汗堅ろう度試験手順

試験結果例
試験項目 試験結果

汗堅ろう度

酸性 変退色 4級
汚染 3-4級

アルカリ性

変退色 4級
汚染 3級
試験方法:JIS L 0848
試験結果の見方

一般的な目安値は次の通りです。

  • 変退色:4級以上
  • 汚染:3級以上
補足

ご依頼時に必要な試料サイズは こちら

コラム
人工汗液とpH

 人間の汗は個人差が大きく、また同じ人でも食事内容や体調などにより汗が変わってきます。試験の都度、人間から汗を集めるわけにもいきませんし、”人間の汗”の標準というものは定めにくいのが現状です。そこで試験では、人工的に汗の液を作ります。人工的に作った汗の液を「人工汗液」と呼びます。人工汗液には2種類あります。一つは酸性の人工汗液(pH:5.5)、もう一つはアルカリ性の人工汗液(pH:8.0)です。
 pHは”ペーハー”または”ピーエイチ”と読みます。pHは化学の用語で、酸性やアルカリ性の程度を示すものです。”弱酸性”のボディソープ、”弱アルカリ性”の洗剤、”酸性雨”による環境問題などは耳にされたこともあるかと思います。通常pH7が中性で、pHは小さいほど酸性を示し大きいほどアルカリ性を示します。理科の実験で、リトマス試験紙の色が変化するのもpHの変化によるものです。