ドライクリーニング堅ろう度試験(JIS L 0860)

概要

 「ドライクリーニング堅ろう度試験」とは、ドライクリーニングの作用による「色の変化の程度(変退色)」と「他のクリーニング物への色移りの程度(汚染)」を評価するものです。

 主に家庭で行う「水洗い」は、水に洗剤を加えて洗濯液として洗濯します。これに対してドライクリーニングでは、有機溶剤に洗剤(界面活性剤)と水分を加えた試験液(クリーニング液)を使用します。国内で使用されている主な有機溶剤には「パークロロエチレン」と「石油系」があります。


目的
 ドライクリーニングにより、衣料品が変色したことはありませんか?これは、ドライクリーニングにより衣料品の色素がクリーニング液に出ていってしまったからです。そんな危険を事前に察知できるのが、ドライクリーニング堅ろう度試験です。
JIS L 0860 A-1法(パークロロエチレン)
試験方法
  1. パークロロエチレンに界面活性剤と微量の水分を加えた試験液を用います。
  2. 試験瓶にこの試験液、多繊交織布を付けた試験試料及びステンレス鋼球20個を入れ、30±2℃で30分間洗濯処理します。試験機は洗濯堅ろう度試験と同じ装置です。
  3. パークロロエチレンですすぎ、ろ紙等で脱液し60℃以下の乾燥機で乾燥又は自然乾燥します。

試験瓶

試験結果例
試験項目 試験結果
ドライクリーニング堅ろう度 変退色 4-5級
汚染 5級
試験方法:JIS L 0860 A-1法(パークロロエチレン)
試験結果の見方

一般的な目安値は次の通りです。

  • 変退色:4級以上
  • 汚染:3級以上
コラム

 日本国内でドライクリーニングに用いられる溶剤は、主に2種類あり一つは「パークロロエチレン」、もう一つは「石油系」になります。

 通常、パークロロエチレンは溶解性が強い特性から、油性の汚れ成分が落ちやすくなる半面、衣料品の付属材料で用いられる接着剤・バインダー剤(顔料プリント、接着布など)やプラスチック素材(ボタン、ビーズなど)を溶解させてしまうことがあります。また、塩ビ素材などは硬化させてしまうことがあります。

 石油系溶剤は、パークロロエチレンほどの溶解性はありませんが、付属材料の材質によりパークロロエチレンの場合と同様な問題が発生することがあります。

 付属材料においては、事前にドライクリーニング堅ろう度で問題ないことを確認されることをお勧めします。

JIS L 0860 B-1法(石油系)
試験方法
  1. 工業ガソリン5号に界面活性剤と微量の水分を加えた試験液を用います。
  2. 試験瓶にこの試験液、多繊交織布を付けた試験試料及びステンレス鋼球20個を入れ、30±2℃で30分間洗濯処理します。試験機は洗濯堅ろう度試験と同じ装置です。
  3. 工業ガソリン5号ですすぎ、ろ紙等で脱液し自然乾燥します。
試験結果例
試験項目 試験結果
ドライクリーニング堅ろう度 変退色 4-5級
汚染 5級
試験方法:JIS L 0860 B-1法(石油系)
試験結果の見方

一般的な目安値は次の通りです。

  • 変退色:4級以上
  • 汚染:3級以上