ピリング試験(JIS L 1076)

概要

 毛玉(ピル)を生じた状態のことをピリングといいます。ピリング試験は「擦れ作用による毛玉のできる度合い」を試験します。


目的

 セーターなどにできる毛玉(ピル)は、着用中や洗濯処理時の摩擦作用が原因です。摩擦などの物理的作用を受けて繊維の先端が生地表面に出てきた後、その毛羽が互いに絡まり合い、毛玉(ピル)となるのです。そのピルの発生程度を評価します。


試験対象品
  • 衣料品
  • 服飾雑貨
A法(ICI形試験機)
試験方法
  1. 生地から、100mm×120mmの大きさの試験試料を4枚切り出します。(2枚は縦長、2枚は横長)
  2. それぞれの生地を、直径約3cm、長さ約15cmのゴム管に巻き付けます。
  3. 試験には、縦・横・高さ約300mmの「回転箱」を用います。
    回転箱の内側にはコルク板が貼られており、この中に先ほどのゴム管4本を入れます。
    回転箱の内側
  4. 回転箱は回転軸に取り付けられており、試験の運転を開始すると回転する仕組みになっています。
  5. 試験中(運転中)、回転箱の中ではゴム管に巻き付けた試料は互いに、またはコルク面と摩擦されます。
  6. 一定時間後、試験機を停止させゴム管を取り出します。(一般な回転時間:織物10時間、編物5時間)
  7. ゴム管から試料をはがして毛玉(ピル)の出来た程度を判定します。
    ピリング試験機
  8. 判定は、判定標準写真を使用して等級を決めます。
  9. 判定標準写真には生地にピルが生じた状態が写っており、「1号」(ピルが大量に生じている写真)から「5号」(ほとんどピルが生じていない写真)まで5種類あります。
  10. 試験した試料4枚が判定標準写真の何号に相当するかを比較し、等級を決めます。
ピルが発生した試料の例
試験結果例
試験項目 試験結果
ピリング 4.0級
試験方法:JIS L 1076 A法(ICI形試験機)
試験結果の見方

等級が大きいほど良い結果を表します。

一般的には3.0級以上が目安です。

C法(アピアランス・リテンション形試験機)
対象製品
  • フィラメント糸使いの生地
試験方法
  1. 生地から100mm×100㎜を3枚切り出します。
  2. 試料ホルダに試験片を装着し、約3.92Nの荷重で20回摩擦板と摩擦します。
  3. 判定は、標準写真(N、L、M、H)と比較します。
  4. Nは4、Lは3、Mは2、Hは1に置き換え、3枚の平均値を四捨五入し整数値とします。
  5. 整数値の結果を、最終的にN級、L級、M級、H級として報告します。


 

アピアランス・リテンション試験機


アピアランス・リテンション試験機はARTともいいます。

試験結果例
試験項目 試験結果
ピリング L級
試験方法:JIS L 1076 C法(ART形)
補足

 C法(アピアランス・リテンション形試験機を用いる方法)のピリング試験は、主にフィラメント糸(長繊維糸)使いの織編物に用いられます。フィラメント糸使いの生地は、紡績糸などの短繊維使いの生地とは異なり、生地表面に毛羽が飛び出しにくい構造です。しかし、スポーツウェアなどのジャージ生地などで毛玉が生じることがあります。

 一般的に用いるA法(ICI形試験機を用いる方法)で評価すると結果が良好となる場合があり、C法の用いられている摩擦板による摩擦で毛羽を強制的に発生させ、実際の着用と同じような現象を再現することが出来ます。