滑脱抵抗力試験(JIS L 1096)

概要

 縫目を作製した試験片を、縫い目を中心に所定の力で引っ張り、縫目から生地が滑脱した長さを測定する試験です。ここでは、いくつかあるJIS L 1096の滑脱抵抗力試験方法のうち、最も一般的な方法をご紹介します。


目的

 着用中など、縫目部分に力が加わった時、縫目付近の糸がスリップする現象を滑脱と呼びます。長繊維の薄地や粗密度の生地は滑脱しやすい傾向がありますが、縫目の滑脱のしやすさを確認することで、適切な縫い方の選定に生かすことができます。


試験対象品
  • 織物の繊維製品
JIS L 1096 縫目滑脱法・B法
試験方法
  1. 試料をたて方向及びよこ方向に採取します。
  2. 試験片を長さ方向に半分に折り、折目を切断して切断端から10mmのところを本縫いで縫い合わせます。
  3. 試験片に所定の荷重をかけ、引張試験機で引っ張ります。
  4. 試験機から取り外した試験片を1時間放置後、滑りの最大の長さを測定します。


 

 

異常現象例 付記の例
設定荷重以下で完全に滑脱した 〇Nで完全滑脱
設定荷重以下で生地が破断した ○Nで生地破断
設定荷重以下で縫糸が切断した ○Nで縫糸切断
試験結果例
試験項目 試験結果
滑脱抵抗力 たて
よこ 2.5mm

※:101.5Nで完全滑脱
 

試験方法:

JIS L 1096 縫目滑脱法・B法

荷重:117.7N

試験結果の見方

数値が小さいほど滑脱抵抗力があることを示します。一般的な目安値は次の通りです。

滑脱抵抗力:3mm以下

・たて方向の滑脱・・・たて糸上のよこ糸の動き。ヨーク切り替えなどを想定

・よこ方向の滑脱・・・よこ糸上のたて糸の動き。脇線などを想定

コラム

縫目滑脱を防止する方法としては次のようなものがあります。

  1. 滑脱防止テープを縫目部分に接着し縫製する。
  2. 生地端にロックミシンをかける。
  3. 縫目部分を樹脂で固める。
  4. 縫目が完全滑脱する場合は、縫い代の長さを増やす。