滑脱抵抗力試験(JIS L 1096/ ISO 13936-2)

概要

 縫目を作製した試験片を、縫い目を中心に所定の力で引っ張り、縫目から生地が滑脱した長さを測定する試験です。ここでは、いくつかあるJIS L 1096の滑脱抵抗力試験方法のうち、最も一般的な方法をご紹介します。


目的

 着用中など、縫目部分に力が加わった時、縫目付近の糸がスリップする現象を滑脱と呼びます。長繊維の薄地や粗密度の生地は滑脱しやすい傾向がありますが、縫目の滑脱のしやすさを確認することで、適切な縫い方の選定に生かすことができます。


試験対象品
  • 織物の繊維製品
JIS L 1096 縫目滑脱法・B法
試験方法
  1. 試料をたて方向及びよこ方向に採取します。
  2. 試験片を長さ方向に半分に折り、折目を切断して切断端から10mmのところを本縫いで縫い合わせます。
     

     
  3. 試験片に所定の荷重をかけ、引張試験機を用いてグラブ法にて引っ張ります。
    グラブ法の条件
    引張速度 300mm/min
    つかみ間隔 76.2mm
    生地の種類 荷重(N)
    薄地(ブラウス地など) 49.0
    厚地(スラックスなど) 117.7
     

     
  4. 試験機から取り外した試験片を1時間放置後、滑りの最大の長さ(a+a')をミリメートル単位で測定します。


 

異常現象例 付記の例
設定荷重以下で完全に滑脱した 〇Nで完全滑脱
設定荷重以下で生地が破断した ○Nで生地破断
設定荷重以下で縫糸が切断した ○Nで縫糸切断
試験結果例
試験項目 試験結果
滑脱抵抗力 たて
よこ 2.5mm

※:101.5Nで完全滑脱
 

試験方法:

JIS L 1096 縫目滑脱法・B法

荷重:117.7N

試験結果の見方

数値が小さいほど滑脱抵抗力があることを示します。一般的な目安値は次の通りです。

滑脱抵抗力:3mm以下

・たて方向の滑脱・・・たて糸上のよこ糸の動き。ヨーク切り替えなどを想定

・よこ方向の滑脱・・・よこ糸上のたて糸の動き。脇線などを想定

コラム

縫目滑脱を防止する方法としては次のようなものがあります。

  1. 滑脱防止テープを縫目部分に接着し縫製する。
  2. 生地端にロックミシンをかける。
  3. 縫目部分を樹脂で固める。
  4. 縫目が完全滑脱する場合は、縫い代の長さを増やす。
ISO 13936-2 固定荷重法
試験方法
  1. 200mm×100mmの試験片を、たて方向およびよこ方向にそれぞれ5枚採取します。
  2. 試験片の長辺を半分に折り曲げ(表を中側)、折目から20mmの箇所を本縫いします。
  3. 縫目から12mmの箇所を切断します。

     
  4. 定速伸長形引張試験機を用い、試験片をグラブ法で下表の通り、固定荷重まで引っ張ります。
    グラブ法の条件
    引張速度 50mm/min
    つかみ間隔 100mm
    生地の種類 固定荷重(N)
    アパレル用生地≦220g/m2 60
    アパレル用生地>220g/m2 120
    家具用生地 180
     

     
  5. 試験片を固定荷重まで引っ張ったら、直ちに50mm/minで元に戻し荷重を5Nまで減少させます。
  6. 荷重5Nを掛けたまま、たて糸の滑り(warp slippage)またはよこ糸の滑り(weft slippage)による最大の縫目の開き(縫目開口距離)をミリメートル単位で測定します。
     

     
  7. たて糸およびよこ糸の縫目開口距離をそれぞれ平均し、整数位に丸めます。
試験結果例
試験項目 試験結果

滑脱抵抗力

たて糸 3mm
よこ糸 1mm
試験方法:

ISO 13936-2

荷重:60N

補足
  • たて糸の滑りは、たて糸がよこ糸の上を滑ることを意味しています。
  • よこ糸の滑りは、よこ糸がたて糸の上を滑ることを意味しています。
  • 従って、ISO法とJIS法はたてとよこの試験結果が逆になります。