摩耗強さ試験(JIS L 1096)
概要
衣料品等の着用時に、摩擦による耐久性を評価する試験です。JIS L 1096では、ユニバーサル形法、マーチンデール形法、ユニホーム形法、スコット形法などが規定されています。素材の用途、組成などで使い分けされます。
ユニバーサル形法・A-1法(平面法)
概要
衣料品着用時のひじ、ひざ、脇、尻などで使用される生地を平面状に摩耗して、穴が開くまでの回数を測定します。
試験方法
- 直径約120㎜の試験片を5枚採取します。
- ユニバーサル形試験機のゴム膜上に試験片を装着し、27.6kPaの空気圧をかけてゴム膜を膨らまします。
- 耐水研磨紙(Cw-C-P800など)を試験機上部に装着します。
- 押圧荷重4.45Nにて、多方向(往復運動+回転運動)に摩耗します。
- 試験片が摩耗により孔の直径又は長辺の最大長さが8mmになった時点を終点とし、5枚の平均値(正数位)を結果とします

試験結果例
試験方法: |
JIS L 1096 A-1法(平面法)
押圧荷重:4.45N
耐水研磨紙:Cw-C-P800 |
試験結果の見方
A-1法(平面法)の一般的な目安値はありません。生地の組成、組織、厚さ、質量、密度などで大きく結果が変わるからです。通常は比較試験などに用いられています。
ユニバーサル形法・A-3法(折目法)
概要
シャツの袖口やパンツ裾などの折り目部分が、着用時の摩擦により生地糸が切れてしまうまでの回数を測定します。
試験方法
- 25mm×約75mmの試験片をたて方向、よこ方向それぞれ5枚づつ採取します。
- 折目摩耗用クランプに試験片を取り付けます
- そのクランプをユニバーサル形試験機に取り付け、耐水研磨紙(Cw-C-P800など)を試験機上部に装着します。
- 押圧荷重2.23N(または4.45N)にて、多方向(往復運動+回転運動)に摩耗します。
- 試験片が切断した時点を終点とし、5枚の平均値(正数位)を結果とします。

試験結果例
試験項目 |
試験結果 |
摩耗強さ |
たて |
65回 |
よこ |
52回
|
試験方法: |
JIS L 1096 A-3法(折目法)
押圧荷重:2.23N
耐水研磨紙:Cw-C-P800 |
試験結果の見方
A-3法(折目法)の一般的な目安値はありません。生地の組成、組織、厚さ、質量、密度などで大きく結果が変わるからです。通常は比較試験などに用いられています。
マーチンデール形法・E法
概要
一般的には毛の織物や編物の摩耗強さを評価する方法です。
対象製品
- 毛織編物衣料品
- 毛織編物カーペット
- 毛織編物家具張り地
試験方法
- 直径38mmの試験片を4枚採取します。
- マーチンデール形試験機の試料ホルダーに試験片を取り付けます。
- 試験機に、織フェルトとその上に毛織物の標準摩擦布を重ねて取り付けます。
- 押圧荷重9.0kPaにて、試験片と標準摩擦布を摩耗します。試験機はリサージュ図運動をします。

- エンドポイントの判定は下表の通り選ぶことができます。
エンドポイント |
判定 |
糸切れ |
織物は2本の糸切れ、編物は孔が開いた時 |
変退色 |
変退色グレースケールで3級になった時 |
外観変化 |
顕著な変化(起毛の喪失など)が生じた時 |
- エンドポイントまでの回数を測定し、4枚の平均値(100回単位)を結果とします。
試験結果例
試験方法: |
JIS L 1096 E法
(マーチンデール法)
押圧荷重:9.0kPa
エンドポイント:糸切れ
|
補足
カーペットや家具張り地など試料の場合、押圧荷重は12.0kPaで実施します。
ユニホーム形法・F-1法(スチールブレード法)
試験方法
- 直径約70mmの試験片を5枚採取します。
- 試料取付台に試験片を取り付け、引張荷重11.1N(または22.3N)をかけます。
- スチールブレードに押圧荷重44.5N(または22.3N)をかけて試験片を摩耗します。
この時スチールブレードと試料取付台は、同方向に異なる速度で回転しながら摩耗することになります。
- 試験片が破断した時点を終点とし、5枚の平均値(正数位)を結果とします。

試験結果例
試験項目 |
試験結果 |
摩耗強さ |
つま先 |
1205回 |
かかと |
1108回
|
試験方法: |
JIS L 1096 F-1法
(スチールブレード法)
引張荷重:11.1N
押圧荷重:44.5N
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試験結果の見方
一般的な目安値は、引張荷重11.1N、押圧荷重44.5Nで500回以上(カジュアルソックス)ともいわれています。
補足
靴下の摩耗強さを実施する場合、部位は特に決まっていませんが、穴の開きやすいつま先、かかとを実施することが多いです。また、つま先やかかとはナイロン糸などの補強糸が入っていることがあります。
スコット形法・B法
概要
合成皮革などのコーティング素材、金属繊維を用いた特殊な生地などをもみ作用により、コーティングのはく離、金属繊維の切断などの問題が生じないかを評価します。
試験方法
- 約30mm×120mmの試験片をたて方向、よこ方向に5枚ずつ採取します。
- 試験機のつかみ間隔を20mmにした状態で試験片を取り付けます。
- 9.81Nの荷重をかけ、試験片を折り曲げた状態で密着させます。
- 片側のつかみを40mm間往復させ、もみ作用を発生させます。
- 1000回もみ作用後、コーティングなどは外観変化を確認し、金属繊維などは切断の有無を確認します。
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試験結果例
試験項目 |
試験結果 |
摩耗試験 |
たて |
異常なし |
よこ |
異常なし |
試験方法: |
JIS L 1096 B法(スコット形法)
荷重:9.81N
試験回数:1000回 |
補足
着用時にもみ作用が9.81N(約1kgfの荷重)もかからないと想定される場合は、無荷重などで実施することも可能です。