吸水速乾性試験(JIS L 1907・ISO 17617など)
概要
生地が汗や湿気を吸い取っても、生地が濡れたままでは不快感や冷えを感じます。吸水速乾は、汗や湿気を吸い取って(吸水)、すばやく蒸発させる(速乾)機能です。
吸水速乾性の仕組み
特殊断面繊維や疎水性の繊維と親水性の繊維の組合せによる糸・生地設計をし、毛細管現象の利用により、水を素早く拡散させ蒸発し易い状況を実現しています。なお、水を素早く拡散させる加工剤を含侵させることによって速乾性を付与しているものもあります。
JIS L 1907(吸水速度法 滴下法/バイレック法)
試験方法
吸水速度法・滴下法
- 200mm×200mmの試験片を試験片保持枠に取り付けます。
- 試験片表面からビュレット先端の距離を10mmにします。
- 水を1滴滴下させ、試験片上に水滴が落ちた時から水滴が完全に試験片に吸収されるまでの時間を計測します。

吸水速度法・バイレック法
- 200mm×25mmの大きさでたて方向(又はウェール方向)、よこ方向(又はコース方向)それぞれ5枚ずつ採取します。
- 試験片の端を水槽の中に20mm浸漬します。
- 浸漬してから10分後に毛細管現象で水面から上昇した水の高さを測定します。

試験結果例
| 試験項目 |
試験結果 |
試験方法 |
| 吸水速度(秒) |
1未満 |
JIS L 1907 吸水速度法・滴下法
測定面:裏側
|
| 吸水速度(mm) |
たて |
124 |
JIS L 1907 吸水速度法・バイレック法 |
| よこ |
102 |
試験結果の見方
滴下法は秒数が少ないほど、バイレック法は長さが大きいほど、吸水性が優れていることになります。
拡散性残留水分率
試験方法
- 水を生地中央に0.3ml滴下します。
- 水分の拡散乾燥にともなう、試験片重量を5分間隔で自動測定します。
- 5分毎の拡散性残留水分率を算出します。
拡散性残留水分率(%) = (任意の時間の水分重量(g) / 測定開始時の水分重量(g) )×100
試験結果例
【測定例】拡散性残留水分率


試験結果の見方
対照品と比較して、加工品は早く乾燥することがわかります。
ISO 17617-2014 A1法
試験方法
- 滴下法により吸水性を確認します。
- 水を生地中央に0.3ml滴下し、水分の拡散乾燥にともなう、試験片重量を5分間隔で自動測定します。
- 乾燥した重さの割合LT(%) = ( 任意の時間で乾燥した水分重量(g) / 測定開始時の水分重量(g) ) × 100
- 各時間の測定値LTより、水分が乾燥していく過程の近似式( y = ax + b )を求めます。
なお、近似式を求める際にはLT : 90 % まで、t : 60 分までの値を使用します。
- 求めた近似式から
任意の乾燥割合(100%など)の乾燥時間「drying time(100%)」
水分が乾燥する速度の指標「drying rate」 などを得ます。

試験結果例
得られた近似式(y = 3.23x - 0.23 )から以下の結果を得ます。
- drying time(100%) 31分 ・・・(近似式で y = 100 のときのx)
- drying rate [DR] 3.23 ・・・(近似式の傾き)

試験結果の見方
- drying time :数値が小さいほど、早く乾燥することを表します。
- drying rate :数値が大きいほど早く乾燥することを表します。
コラム
国際規格ISO 17617-2014 A1法は、当センターで考案した試験方法です。
GB/T21655.2-2019・AATCC 195
概要
MMT(Moisture Management Tester)を用いて評価します。
試料を同心円状に配置されたセンサー(電極)ではさみ、上部センサーの中心から試験液が試料の肌面へ供給されます。試料における試験液の移動状況(水滴下面での拡散、水滴下面から透水面への移動、透水面での拡散)をモニタリングします。

試験結果の見方
【等級区分】
| 項目 |
1級 |
2級 |
3級 |
4級 |
5級 |
| 湿潤時間 T/s |
>120.0 |
20.1~120.0 |
6.1~20.0 |
3.1~6.0 |
≦3.0 |
| 吸水速度 A/(%/s) |
0~10.0 |
10.1~30.0 |
30.1~50.0 |
50.1~100.0 |
>100.0 |
| 最大湿潤半径 R/mm |
0~7.0 |
7.1~12.0 |
12.1~17.0 |
17.1~22.0 |
>22.0 |
| 拡散速度 S/(mm/s) |
0~1.0 |
1.1~2.0 |
2.1~3.0 |
3.1~4.0 |
>4.0 |
| 一方向浸透指数 O |
<-50.0 |
-50.0~100.0 |
100.1~200.0 |
200.1~300.0 |
>300.0 |
| 備考:浸水面(裏側)および浸透面(表側)の等級分け・基準値は同じ。5級は最もよく、1級は最も悪い。 |
GB/T21655.2-2019 表1より(表は当センター作成)
【性能評価の技術的要件】
| 性能 |
項目 |
基準 |
| 吸水速乾性 |
湿潤時間* |
≧3級 |
| 吸水速度* |
≧3級 |
| 最大湿潤半径(浸透面) |
≧3級 |
| 拡散速度(浸透面) |
≧3級 |
| 吸水汗発散性 |
湿潤時間(浸透面) |
≧3級 |
| 吸水速度(浸透面) |
≧3級 |
| 一方向浸透指数 |
≧3級 |
| *浸水面(裏側)も浸透面(表側)も基準値を満たすこと。 |
GB/T21655.2-2019 表1より(表は当センター作成)