圧力損失はマスク着用時における呼吸のしやすさの指標です。試験方法は、欧州規格(European Norm)のEN 14683や日本産業規格のJIS T 9001で規定され、基準は米国ASTM F 2100やJIS T 9001で規定されています。
21℃、85%RHで調湿したマスクを試料ホルダー(直径25mm)に取り付け、吸引ポンプを調節して流量が8L/minとなるようにします。この時の圧力損失(mmH2OまたはPa)を差圧計で測定し、測定面積で割返した値(mmH2O/cm2またはPa/cm2)を最終結果とします。
結果の単位は、EN 14683では「mmH2O/cm2」、JIS T 9001では「Pa/cm2」で表されます。また、単位の換算は、次の通りとなります。
1mmH2O/㎝2≒9.807Pa/cm2
EN 14683とJIS T 9001は単位の表記は異なりますが、試験方法は同じです。
試験項目 | 試験結果 | 試験方法 |
---|---|---|
圧力損失 (Pa/cm2) |
28.3 | JIS T 9001 |
試験方法(ASTM F 2100-19) |
性能区分 | ||
---|---|---|---|
レベル1 | レベル2 | レベル3 | |
バクテリア飛まつ捕集効率(BFE%)ASTM F2101 | ≧ 95 | ≧ 98 | ≧ 98 |
圧力損失(mmH2O/cm2)EN 14683 | < 5.0 | < 6.0 | < 6.0 |
微小粒子捕集効率(PFE%@0.1μm)ASTM F2299 | ≧ 95 | ≧ 98 | ≧ 98 |
人工血液バリア性(mmHg)ASTM F1862( ≒ ISO 22609) | 80 | 120 | 160 |
可燃性 16 CFR Part 1610 | クラス1 | クラス1 | クラス1 |
ASTM F 2100-19 TABLE 1より(表は当センター作成)
試験方法(ASTM F 2100-11(旧版)) | 性能区分 | ||
---|---|---|---|
レベル1 | レベル2 | レベル3 | |
バクテリア飛まつ捕集効率(BFE%)ASTM F2101 | ≧ 95 | ≧ 98 | ≧ 98 |
圧力損失(mmH2O/cm2)MIL-M-36954C | < 4.0 | < 5.0 | < 5.0 |
微小粒子捕集効率(PFE%@0.1μm)ASTM F2299 | ≧ 95 | ≧ 98 | ≧ 98 |
人工血液バリア性(mmHg)ASTM F1862( ≒ ISO 22609) | 80 | 120 | 160 |
可燃性 16 CFR Part 1610 | クラス1 | クラス1 | クラス1 |
ASTM F 2100-11 TABLE 1より(表は当センター作成)
日本では、JIS T 9001「医療用及び一般用マスクの性能要件及び試験方法」が2021年6月に制定され圧力損失の基準があります。当センターでは、下表に示した全ての試験が実施可能です。
【JIS T 9001 医療用マスクの品質基準】
項目 | 品質基準 | ||
---|---|---|---|
クラスⅠ | クラスⅡ | クラスⅢ | |
微小粒子捕集効率(PFE) (%) | ≧95 | ≧98 | ≧98 |
バクテリア飛まつ捕集効率(BFE) (%) | ≧95 | ≧98 | ≧98 |
ウイルス飛まつ捕集効率(VFE) (%) | ≧95 | ≧98 | ≧98 |
圧力損失 (Pa/cm2) | <60 | <60 | <60 |
人工血液バリア性 (kPa) | 10.6 | 16.0 | 21.3 |
可燃性 | 区分1 | 区分1 | 区分1 |
遊離ホルムアルデヒド (μg/g) | ≦75 | ||
特定アゾ色素 (μg/g) a) | ≦30 b) | ||
蛍光 c) | 著しい蛍光を認めず | ||
注a) 着色又は染色された製品についてだけ試験を適用する 注b) 生成された特定芳香族アミン24種それぞれが30μg/g以下でなければならない。 注c) マスクの呼吸に係る本体部(耳掛けゴムなどの付属品を除く。)だけに適用する。 |
JIS T 9001:2021 表1より(表は当センター作成)
項目 | 品質基準 | |
---|---|---|
微小粒子捕集効率(PFE) (%) | ≧95 |
製品にて機能を標ぼうする項目について、実施する。 |
バクテリア飛まつ捕集効率(BFE) (%) | ≧95 | |
ウイルス飛まつ捕集効率(VFE) (%) | ≧95 | |
花粉粒子捕集効率 (%) | ≧95 | |
圧力損失 (Pa/cm2) | <60 | |
遊離ホルムアルデヒド (μg/g) | ≦75 | |
特定アゾ色素 (μg/g) a) | ≦30 b) | |
蛍光 c) | 著しい蛍光を認めず | |
注a) 着色又は染色された製品についてだけ試験を適用する 注b) 生成された特定芳香族アミン24種それぞれが30μg/g以下でなければならない。 注c) マスクの呼吸に係る本体部(耳掛けゴムなどの付属品を除く。)だけに適用する。 |
JIS T 9001:2021 表2より(表は当センター作成)
【JIS T 9001 一般用マスクの洗濯後の品質基準】
洗濯再利用を標ぼうする一般用マスクにおいては、原品(洗濯前)での性能に加えて、表示された洗濯方法・洗濯回数後の捕集効率試験及び圧力損失試験について基準を満たす必要があります。
項目 | 品質基準 | |
---|---|---|
微小粒子捕集効率(PFE) (%) | ≧95 |
製品にて機能を標ぼうする項目について、実施する。 |
バクテリア飛まつ捕集効率(BFE) (%) | ≧95 | |
ウイルス飛まつ捕集効率(VFE) (%) | ≧95 | |
花粉粒子捕集効率 (%) | ≧95 | |
圧力損失 (Pa/cm2) | <60 |
JIS T 9001:2021 表3より(表は当センター作成)
ASTM F2100「医療用フェイスマスクに使用される材料の性能仕様」では、これまでその試験方法としてMIL-M-36954C(現在廃版)が規定されていましたが、2019年の改訂で試験方法がEN 14683に変更となりました。なお、MIL-M-36954CとEN 14683の試験条件は同等ですが、ASTM F2100の基準値が改訂されました。
バクテリア飛まつ捕集効率(BFE)、微小粒子捕集効率(PFE)の数値が高い場合、マスク装着時の呼吸がしにくいものがあります。そのためにもBFEやPFE試験と同時に圧力損失試験も実施し、呼吸がしやすさを評価することをお勧めします。