繊維鑑別試験(JIS L 1030-1)

概要
 「繊維鑑別試験」とは、「繊維の種類」を調べる試験です。繊維には天然繊維の綿や麻、合成繊維のポリエステルやナイロンなど様々な種類があります。その繊維の種類を調べます。

 繊維の種類を調べるにはいくつかの手法があり、一般には複数の手法を組み合わせて調べます。この手法には、燃焼試験、顕微鏡試験、各種試薬に対する溶解試験、赤外吸収スペクトルの測定などがあります。
試験対象品
  • 生地
  • 繊維製品
  • 樹脂
燃焼試験
試験方法

 文字通り繊維を燃焼させます。繊維を炎に近づけたときの状態、炎の中に入れたときの状態、炎から離れたときの状態、燃焼後の臭い、灰の状態を観察します。炎の中で普通に燃える繊維もあれば、溶けながら燃える繊維もあります。

 綿や麻は燃焼させると紙が燃える臭いがします。また毛や絹では髪の毛が燃えるような臭いがします。

補足

 燃焼試験とは別に「繊維中の塩素の確認試験」があります。

 この試験は、銅線をガスバーナで熱した状態のまま、繊維に当てて銅線に付着させます。その後、繊維が付着した銅線を再度ガスバーナで熱したとき、緑色の炎が上がれば繊維中に塩素があることになります。この現象は炎色反応といい、試験方法はバイルシュタイン法と呼ばれています。

 バイルシュタイン法で塩素の確認が見られる繊維は、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、モダクリルなどが該当します。

顕微鏡試験
試験方法
 顕微鏡を使用して繊維の側面や断面を観察します。側面が真っ直ぐな繊維や、ねじれた繊維、ウロコのような形状を持つ繊維などがあります。テレビコマーシャルなどで髪の毛のキューティクルなどの側面写真を目にされたこともあるかと思います。
 
   
綿の側面   毛の側面   ポリエステルの側面
溶解性試験
試験方法

 濃硝酸、70%硫酸、20%塩酸などの試薬を用い、繊維に添加した後に繊維の状態(不溶、僅かに溶解、溶解など)を顕微鏡で観察して繊維の種類を同定します。
 

各種試薬に対する繊維の溶解性の例

繊維名 溶剤
70%硫酸 20%塩酸
綿 溶解する 溶解しない
ポリエステル 溶解しない 溶解しない
ナイロン 溶解する 溶解する

赤外吸収スペクトルの測定
試験方法
 赤外分光光度計を使用し、スペクトルの吸収帯と特定波数を測定する試験です。これは繊維の分子の構造を調べるものです。得られた赤外吸収スペクトルにより、繊維の種類が同定できます。
 

赤外分光光度計