帯電性試験 衣料品・電気抵抗(JIS K 6911/ JIS L 1094/ IEC 61340-5-1 TR2)

概要

 静電気による放電が原因で、爆発や火災を伴う事故や、半導体デバイスの破壊が起きることがあります。このような現象を起こさないために、可燃物質を扱う工場や半導体工場等の作業者は、静電気対策として導電性繊維を生地に使用した作業服を着用しています。

 導電性繊維は電気を通しやすい性質を持つため、生地の電気抵抗を測定することで制電性(帯電性)の評価をすることが可能です。


衣類の抵抗測定法(IEC 61340-5-1 TR2)
概要

 電子機器の製造現場では、静電気放電による電子部品の破壊や不具合発生等の障害を防ぐため、静電気管理が必要とされています。静電気管理の準国際規格に「IEC 61340-5-1 TR2」があります。これは、静電気現象からの電子デバイスの保護」を目的とした規格であり、カケンでは、付属書A.3部分「衣類の試験のための抵抗測定法」に基づく試験に対応しています。

  

※IEC・・・International Electrotechnical Commission(国際電気標準会議)

※参考・・・ 「JIS T 8118 静電電気帯電防止作業服」の「帯電電荷量測定試験」

 こちらも作業服の規格ですが、製品形態での評価が可能なため、一般衣料への適用が増えています。

試験方法

・絶縁板の上に広げた衣類の表面に2つの電極を設置して一定電圧を加え、この電極間に流れる電流より電気抵抗を測定します。

縫い目を挟んだ位置に設置した電極間の点間抵抗(R)を測定します。

・必要試料・・・生地50cm角または製品一着~

試験環境:23℃、25%RH

この規格では、衣類の全ての部分で電気的な導通性が必要とされているため、身頃部分と袖部分、身頃部分とフード部分等、縫い目部分の導通性が重要となります。

試験結果の見方
試験項目 基準値
電気抵抗(Ω)

1×1012 Ω 以下

体積抵抗率(JIS K 6911)
概要

 JIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」の試験の一つに体積抵抗率測定があります。これは電気の流れにくさや流れやすさの指標として用いられます。

試験方法
  1. 直径約100㎜、厚さ2mmの試験片を準備します(試験環境:20℃、65%RH)。
  2. 表面電極と裏面電極の間に試験片を挟み、直流電圧500Vを1分間印加します。
  3. 電圧計および電流計の数値を読み取り、体積抵抗値(MΩ)を算出します。
    Ω(R)=電圧(V)/電流(A)
  4. 下式の通り、体積抵抗率(MΩcm)を求めます。

ρv:体積抵抗率(MΩcm)

d:表面電極の内円の外径(cm)

t:試験片の厚さ(cm)

Rv:体積抵抗値(MΩ)


表面漏えい抵抗(JIS L 1094 附属書A)
概要

 導電性繊維や帯電加工をした生地の抵抗値を測定します。

試験方法
  1. たて(又はウェール方向)80㎜以上、よこ(又はコース方向)50㎜を3枚および、よこ(又はコース方向)80㎜以上、たて(又はウェール方向)50㎜を3枚採取します。
  2. 試験片の電極に接触する部分に導電性塗料を塗布し、電極で生地の表面および裏面を挟みクリップで留めます。
  3. 直流電圧1000Vを3分間印加して、電圧計と電流計の数値を読み取ります。
  4. 下式の通り、電気抵抗率を算出します。
  5. 直流10Vを印加した時、1分後の電流が1×10-5A以上の場合は、10Vの印加とし、1分後の電流値で計算します。


電気抵抗率(Ω)=印加電圧(V)/電流値(A)
 

試験結果例
試験項目 試験結果 試験方法

表面漏えい抵抗率

(Ω)

たて 1.5×107

JIS L 1094 付属書A

印加電圧:1000V

洗濯処理:未処理

試験室の温湿度:20℃、40%RH

よこ 2.7×108
試験結果の見方
 表面漏えい抵抗率の数値が小さいほど、静電気が発生しにくいといえます。