帯電防止(制電)製品は、静電気発生を抑制したり、電荷の消失を促進させたりして静電気を帯びることを防いだ製品です。繊維に帯電防止剤を練り込む、後加工で繊維や繊維製品の表面に帯電防止剤を付与する、導電性繊維を使用するなどの方法があります。
静電気は空気中の水分が少ないと発生しやすくなるため、日本では冬場に静電気が発生します。繊維の帯電性試験では、一般的に20℃、40%RH(または30%RH)の環境下で試験を行います。
当センターでは、こちらで紹介するJIS規格のほか、ISO 18080 -1~-4の試験方法にも対応しております。
工場などでの静電気による放電は、事故につながる恐れがあります。作業服そのものや使用生地の静電気の逃げやすさ、発生のしやすさ、電気抵抗などを測定することで、帯電防止効果を評価します。
【摩擦帯電圧】
JIS L 1094 のB法(摩擦帯電圧測定法)に規定されている試験で、摩擦した際に発生する帯電圧(V)を測定します。
・必要試料・・・40cm角
・試験環境・・・20℃、40%RH
【半減期】
JIS L 1094 のA法(半減期測定法)として規定されている試験です。
・必要試料・・・30cm角
・試験環境・・・20℃、40%RH
試験項目 | 試験結果 |
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綿 たて 1800 よこ 1500 毛 たて 2300 よこ 2200 |
半減期(秒) |
1.2 |
試験項目 | 評価の目安 |
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半減期 摩擦帯電圧 |
摩擦帯電圧3000V以下、かつ半減期10秒以下 または 摩擦帯電圧1500V以下、かつ半減期30秒以下 |
着る洋服の素材の組み合わせ方により、静電気の発生しやすさが変わってきます。これらの素材同士の静電気の発生しやすさを並べたものに、摩擦帯電列があります。
この摩擦帯電列の中で、お互いの距離が遠い素材(+側と−側に離れている素材)を組み合わせると、静電気が発生しやすくなります。例えば、アクリル製品の下に羊毛(ウール)製品を着用する場合は、大きな静電気を生じることになります。帯電列表でなるべくアクリルに近い位置の素材のインナーを着用するようにすると、静電気が生じ難くなります。
なお、静電気が発生する条件は、素材の組み合わせだけでなく、周囲の湿度や生地表面の形状などの要因が影響します。また、着用中に衣料品がまとわりつく場合は、市販の静電気防止用スプレーの使用や水洗い可能な製品であれば、洗濯時に柔軟剤を使用することも有効な方法です。
注)帯電系列は純粋な物質から求めたものであり、生地の表面状態や不純物、加工処理などで当てはまらないことがあります。
σ=CV/A
σ:1平方メートル当たりの帯電電荷量(μC/m2)
C:コンデンサの静電容量(μF)
V:電位計の電圧(V)
A:試験片の摩擦面積(0.0625m2)
・必要試料・・・110cm角または製品一着~
・試験環境・・・20℃、40%RH
試験項目 | 試験結果 |
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摩擦帯電電荷量(μC/m2) |
アクリル たて 2.1 よこ 2.9 ナイロン たて 1.9 よこ 2.5 最大値 アクリル よこ 3.3 |
試験項目 | 評価の目安 |
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摩擦帯電電荷量 | 7μC/m2 以下 |
JIS T 8118で規定されているこの試験は「静電気帯電防止作業服」というタイトルがついており、帯電防止織編物で構成された作業服(上衣、下衣、つなぎ服、防寒服等)を評価する規格です。化学工場やガソリンスタンドなど静電気による爆発火災事故を防いだり、電子機器工場など静電気障害による電子部品の破損を防ぐために着用する作業服の規格です。製品形態で帯電防止を評価できることから、一般衣料にも適用することが増えています。
【製品の試験】
Q=CV
Q:帯電電荷量(μC)
C:コンデンサの静電容量(μF)
V:電位計の電圧(V)
・試験環境・・・20℃、40%RH
【生地の試験】
試験項目 | 試験結果 |
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帯電電荷量(μC/着) |
0.36(アクリル) |
帯電電荷量(μC/m2) |
3.8(アクリル) |
試験項目 | 基準値 |
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【製品】 0.6μC/着 以下 【生地】 7μC/m2 以下 |
JIS L 1094 D法として摩擦帯電減衰測定法があり、摩擦帯電圧測定法と摩擦帯電電荷量とを組み合わせた試験方法です。試料を摩擦布(毛又は綿)で摩擦し、発生した初期帯電圧(V)と半減期(秒)を測定します。衣服のまつわり、ほこり付着の評価に用いられます。
・必要試料・・・80cm角