帯電性試験 衣料品(JIS L 1094/ JIS T 8118)

概要

 帯電防止(制電)製品は、静電気発生を抑制したり、電荷の消失を促進させたりして静電気を帯びることを防いだ製品です。繊維に帯電防止剤を練り込む、後加工で繊維や繊維製品の表面に帯電防止剤を付与する、導電性繊維を使用するなどの方法があります。
 静電気は空気中の水分が少ないと発生しやすくなるため、日本では冬場に静電気が発生します。繊維の帯電性試験では、一般的に20℃、40%RH(または30%RH)の環境下で試験を行います。

 当センターでは、こちらで紹介するJIS規格のほか、ISO 18080 -1~-4の試験方法にも対応しております。


目的

 工場などでの静電気による放電は、事故につながる恐れがあります。作業服そのものや使用生地の静電気の逃げやすさ、発生のしやすさ、電気抵抗などを測定することで、帯電防止効果を評価します。


摩擦帯電圧・半減期(JIS L 1094)
対象製品
  • 後加工で帯電防止した製品
  • 繊維に帯電防止剤を練り込んだ製品
試験方法

【摩擦帯電圧】

JIS L 1094 のB法(摩擦帯電圧測定法)に規定されている試験で、摩擦した際に発生する帯電圧(V)を測定します。

  1. 摩擦帯電圧測定機を使用し、試験片を回転させながら摩擦布(綿または毛)と摩擦します。
  2. 摩擦開始60秒後に試験片が帯電した電圧を測定します。

・必要試料:400mm×400mm以上

・試験環境:20℃、40%RH
 

【半減期】

JIS L 1094 のA法(半減期測定法)として規定されている試験です。

  1. 半減期測定機を使用し、試験片に10kVの電圧を30秒間印加します。
  2. 30秒後印加を止め、試験片に帯電した電圧が半分になるまで(半分まで放電)の時間を測定します。

・必要試料:300mm×300mm以上

・試験環境:20℃、40%RH

試験結果例
試験項目 試験結果

摩擦帯電圧

(V)

綿 たて 1800
よこ 1500
たて 2300
よこ 2200
半減期(秒) 1.2

試験方法:

JIS L 1094

摩擦帯電圧測定法、半減期測定法

試験室の温湿度;20℃、40%RH

洗濯処理;JIS L 1930 C4M法3回後、湯洗い吊干し

試験結果の見方

一般的には、次の数値が目安とされています。

  • 摩擦帯電圧3,000V以下、かつ半減期10秒以下
    または
  • 摩擦帯電圧1,500V以下、かつ半減期30秒以下
コラム

 着る洋服の素材の組み合わせ方により、静電気の発生しやすさが変わってきます。これらの素材同士の静電気の発生しやすさを並べたものに、摩擦帯電列があります。
 

 この帯電列表の中で、お互いの距離が遠い素材(+側と−側に離れている素材)を組み合わせると、静電気が発生しやすくなります。例えば、アクリル製品の下に羊毛(ウール)製品を着用する場合は、大きな静電気を生じることになります。帯電列表でなるべくアクリルに近い位置の素材のインナーを着用するようにすると、静電気が生じ難くなります。
 なお、静電気が発生する条件は、素材の組み合わせだけでなく、周囲の湿度や生地表面の形状などの要因が影響します。また、着用中に衣料品がまとわりつく場合は、市販の静電気防止用スプレーの使用や水洗い可能な製品であれば、洗濯時に柔軟剤を使用することも有効な方法です。
 

注)帯電系列は純粋な物質から求めたものであり、生地の表面状態や不純物、加工処理などで当てはまらないことがあります。

摩擦帯電電荷量(JIS L 1094)
概要
 JIS L 1094のC法(摩擦帯電電荷量測定法)として規定されている試験で、摩擦した際に発生する電荷量(C:クーロン)を測定します。
対象製品
  • 導電性繊維を用いた生地
試験方法
  1. 350mm×250mmの試験片に絶縁棒を取り付けます。
  2. 摩擦布(アクリル又はナイロン)を取り付けた敷板の上に1の試験片を置き、その上から摩擦布を巻き付けた摩擦棒で5回摩擦します。
  3. 摩擦後、絶縁棒の一端を持ち、試験片を吊り上げ直ちにファラデーゲージに投入します。
  4. ファラデーゲージに接続した電位計の数値を読み取り、下式から1平方メートル当たりの帯電電荷量を算出し、5回測定の平均値を求めます。
     

σ=CVA

 σ:1平方メートル当たりの帯電電荷量(μC/m2

 C:コンデンサの静電容量(μF)

 V:電位計の電圧(V)

 A:試験片の摩擦面積(0.0625m2
 

  • 必要試料:1100mm×1100mm以上または、製品1着以上
  • 試験環境:20℃、40%RH
試験結果例
試験項目 試験結果

摩擦帯電電荷量

(μC/m2

アクリル たて 2.1
よこ 2.9
ナイロン たて 1.9
よこ 2.5
最大値 アクリル よこ 3.3
試験方法:

JIS L 1094 摩擦帯電電荷量測定法

試験室の温湿度;20℃、40%RH

洗濯処理;JIS L 1930 C4M法3回後、湯洗い吊干し

試験結果の見方

一般的には、次の数値が目安とされています。

  • 摩擦帯電電荷量:7μC/m2以下
帯電電荷量(JIS T 8118)
概要

 JIS T 8118で規定されているこの試験は「静電気帯電防止作業服」というタイトルがついており、帯電防止織編物で構成された作業服(上衣、下衣、つなぎ服、防寒服等)を評価する規格です。化学工場やガソリンスタンドなど静電気による爆発火災事故を防いだり、電子機器工場など静電気障害による電子部品の破損を防ぐために着用する作業服の規格です。製品形態で帯電防止を評価できることから、一般衣料にも適用することが増えています。

対象製品
  • 導電性繊維を用いた生地及び製品
試験方法

【製品の試験】

  1. 製品をJIS L 0217 103法にて5回行い、更に20分間の注水すすぎを行い乾燥させます。
  2. アクリルまたはナイロンの摩擦布を内側に貼り付けた内径約65cmのタンブル乾燥機を空運転し、約60℃に設定します。
  3. 洗濯後の試料をボタンなど留めた着用状態で、2の乾燥機に投入し、15分間運転します。
  4. 運転後、試料をファラデーケージに投入し、下式によって帯電電荷量を算出します。

    QCV
     Q:帯電電荷量(μC)
     C:コンデンサの静電容量(μF)
     V:電位計の電圧(V)
     
  5. アクリル及びナイロン摩擦布それぞれで5回行いその平均値を求め、いずれか大きい方の値を試験結果とします。
  6. 裏地付きの製品は、表裏両面で操作を行い、4つの結果の大きい値を試験結果とします。

  • 試験環境:20℃、30%RH

  

【生地の試験】

  1. 生地をJIS L 0217 103法にて5回行い、更に20分間の注水すすぎを行い乾燥させます。
  2. 試験操作及び測定値の算出は、JIS L 1094 C法(摩擦帯電電荷量)と同じです。
  3. 試験結果はアクリル及びナイロンで摩擦した値の最も大きい値を試験結果とします。

  • 試験環境:20℃、40%RH
試験結果例
試験項目 試験結果
帯電電荷量(μC/着) アクリル 0.36
ナイロン 0.29
試験方法:

JIS T 8118

試験室の温湿度;20℃、40%RH

洗濯処理;JIS L 0217 103法5回後、注水すすぎ20分タンブル乾燥


 

試験項目 試験結果
帯電電荷量(μC/m2 アクリル 3.8
ナイロン 3.0
試験方法:

JIS T 8118

試験室の温湿度;20℃、30%RH

洗濯処理;JIS L 0217 103法5回後、注水すすぎ20分タンブル乾燥

試験結果の見方

一般的には、次の数値が目安とされています。

  • 摩擦帯電電荷量(製品):0.6μC/着以下
  • 摩擦帯電電荷量(生地):7μC/m2以下
摩擦帯電減衰測定法(JIS L 1094)
概要

 JIS L 1094 D法として摩擦帯電減衰測定法があり、摩擦帯電圧測定法と摩擦帯電電荷量とを組み合わせた試験方法です。試料を摩擦布(毛又は綿)で摩擦し、発生した初期帯電圧(V)と半減期(秒)を測定します。衣服のまつわり、ほこり付着の評価に用いられます。

・必要試料:800mm×800mm以上