特に冬場など、衣服のまとわりつきや車のドアでバチッとなることがありますが、これらの現象は、静電気により引き起こるものです。もし、可燃性ガスが充満した場所や半導体工場などで放電が起こると、可燃ガスに引火し、爆発や火災を引き起こしたり、半導体部品を破壊して不良品を発生させたりする原因になります。このような静電気によるトラブルが起きるのは、歩行や作業動作を行った時に床面と履物とが擦れ合うこと等で静電気が発生し、低湿度環境で人体が静電気を帯びること(帯電)によるものです。
現在では帯電防止性能に優れた作業服・作業靴・床の使用、接地や作業環境の多湿化などで、人体帯電の防止が図られています。そして、作業服・作業靴・床の帯電防止性能を評価する様々な試験方法がJIS(日本産業規格)等で制定されてきました。
当センターでは、床材・床の帯電防止性能の評価として「JIS A 1455(床材及び床の帯電防止性能―測定・評価方法)」を実施しております。
床研式帯電試験機は、体格や歩行動作の強弱によるバラツキの要因をなくすためにストロール法の静電靴をゴムローラーに、歩行を導電ゴムローラーの回転に、試験者の体を帯電部(人体と同じ程度の静電気を帯びることができる物)に置き換えた試験機です。
試験は、床研式帯電試験機を試料の上に設置をして、導電ゴムローラーが回転することで発生した電位を求めます。その他に強制的に静電気を付加し、その静電気の逃げる速さの測定も行うことができます。
床研式帯電試験機は、測定の技術等が必要なストロール法(JIS L 1021-16 B法)を機械化すること、静電気の逃げやすさも測定できるようにすること、様々な床材に対応できることを目的とした装置です。床研式帯電試験機は、主に摩擦部、帯電部(人体と同じ程度の静電容量)、電位測定部で構成されています。
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試験装置全体 | 試験装置底部 |
23℃、25%RH環境下で測定装置の回転による摩擦で帯電させ、最大帯電電位と半減時間(電荷の減衰時間)を測定し、2つの値から帯電性能評価値(U値)を求めます。試験者のバラつきの要因が小さく、小さい試料寸法から試験可能なことが特徴です。
用語 | 定義 |
---|---|
最大帯電電位(V) | 試料と導電性ゴムローラーの1分間の摩擦によって帯電部に生じる最大電位 |
半減時間(ms) | 帯電部に電圧を50V印加した時の電位から、印加停止後の電位が1/2に減衰するまでの時間 |
帯電防止性能評価値(U値) |
測定した最大帯電電位と半減時間を用いて得られる値 |
U値=-1.38Vm-0.77Th+8.17
Vm:最大帯電電位の常用対数の平均値
Th:半減時間の常用対数の平均値
試験項目 | 試験結果 | 試験方法 | |||
---|---|---|---|---|---|
最大帯電電位(V) | 半減時間(ms) | U値 | |||
帯電性試験 | 1 | -28 | 630 | 4.0 |
JIS A 1455 |
2 | -28 | 602 | |||
3 | -28 | 598 |
U値 | グレード | 評価の意味 |
---|---|---|
5.2以上 | Ⅰ | 極めて高い帯電防止性能を持つ床材および床 |
3.2以上5.2未満 | Ⅱ | 比較的高い帯電防止性能を持つ床材および床 |
1.2以上3.2未満 | Ⅲ | 帯電防止性能を持つ床材および床 |
1.2未満 | Ⅳ | 帯電防止性能があるとは言えない床材および床 |
JIS A 1455:2002 参考表1より(表は当センター作成)
帯電性能評価値(U値)が大きいほど帯電防止性能が高いと判断されます。上記グレードⅠ〜Ⅳが目安です。
試料サイズ:300mm×300mm以上の大きさで5枚以上
(試料の形状によっては試験ができないことがあります)