ジャングル試験(ATTS法)

概要

 「ジャングル試験」はその名の通り、熱帯雨林のジャングルのような高温多湿の環境下で行う加速劣化試験のことです。


目的

 一般的にポリウレタン樹脂加工品は、経時劣化によるはく離やひび割れが発生することがあります。発生する原因として、使用環境や保管環境における温度・湿度・紫外線による劣化が挙げられます。特に問題となるのが加水分解による劣化で、高温多湿の環境下で水や空気中の水蒸気にさらされると、ポリウレタン樹脂が化学反応を引き起こし分子構造の分解が始まります。その結果、合成皮革などでは基布とポリウレタン樹脂コーティングとのはく離、ポリウレタン樹脂自体のひび割れなどの脆化が発生します。

 加水分解に対する耐久性の評価を行うため、ジャングル試験後における外観変化や強度試験(はく離強さ、もみ試験など)の実施をお勧めしています。


試験対象品
  • 合成皮革
  • ウレタンフォーム
  • 靴のソール
  • 防水加工生地
  • 弾性糸
試験方法
  1. 評価方法に応じて必要な試験片を採取します。
  2. 70℃、95%RH以上(または90%RH以上)に設定した恒温恒湿器に試験片を投入します。
  3. 必要に応じた期間、恒温恒湿器に静置します(一般的には2~6週間)。
  4. 恒温恒湿器から取り出し、外観の状態(はく離、ひび割れ等)を確認します。
  5. 外観以外では、ジャングル試験前後の はく離強さ (JIS L 1086)、もみ試験(アクセレロータ法)などで評価することがあります。

汗ジャングル試験について

 ジャングル試験をさらに加速劣化させる試験方法です。

  1. 評価方法に応じて必要な試験片を採取します。
  2. 人工汗液(JIS L 0848-1978 D法の5倍濃度)を適当な容器に入れ、その容器の中に人工汗液に触れないように試験片を入れ密閉します。
  3. 70℃、95%RH以上(または90%RH以上)に設定した恒温恒湿器に試験片の入った容器を投入します。
  4. 必要に応じた期間、恒温恒湿器に静置します(一般的には6~10日間)。
  5. 恒温恒湿器から取り出し、外観の状態(はく離、ひび割れ等)を確認します。
  6. 外観以外では、ジャングル試験前後のはく離強さ(JIS L 1086)、もみ試験(アクセレロータ法)などで評価することがあります。
 
汗ジャングル試験6日後の様子
試験結果例
試験項目 試験結果
ジャングル試験・外観 2週間後 異常なし
4週間後 わずかにはく離が生じる
ジャングル試験・もみ試験 2週間後 わずかに異常あり※1
4週間後 かなり異常あり※2

※1:はく離が認められる

※2:はく離およびひび割れが認められる

 

試験方法

ジャングル試験: 70℃、95%RH環境下で2週間および4週間
外観: ジャングル試験後に目視にて確認
もみ試験: シャーリングゴムで筒状にした試験片を界面活性剤に浸漬した後、アクセレロータ形摩耗試験機にて2000回転、10分間処理した。
試験結果の見方

 一般的にポリウレタン樹脂の場合、ジャングル試験1週間で、実際の1年使用に相当すると言われています。また、「衣料用ポリウレタン加工素材の経時変化に対する評価法の研究(ATTSポリウレタンコーティング素材研究分科会)」では、汗ジャングル試験6日間で実際の約4年~6年使用相当、汗ジャングル試験10日間で実際の約7年~8年使用相当と報告されています。このことから、汗ジャングル試験16時間~20時間で実際の1年使用に相当すると推測されます

 ジャングル試験や汗ジャングル試験を実施することで、ポリウレタン樹脂の加水分解による耐用年数を推測することが可能となります。