はく離強さ(JIS L 1066/ 1085/ 1086)
概要
衣料品などで用いられるはく離強さは、次の試験規格があります。
- JIS L 1066:ウレタン衣料生地試験方法
- JIS L 1085:不織布しん地試験方法
- JIS L 1086:接着芯地及び接着布試験方法
織物、編物、不織布、ウレタンフォームのいずれかを接着したものの接着強度を評価する試験です。
目的
接着強度が弱いと、衣料品では着用時や水洗い洗濯のもみ作用による部分的なはく離が、またドライクリーニングの溶剤による接着剤の溶解で部分的なはく離が生じることがあります。部分的なはく離は、「ブクツキ」と呼ばれ、生地表面にエンボス加工のようなボコボコした模様が現れる現象のことです。
はく離強度を評価することで、ブクツキ防止の一助となることが考えられます。
JIS L 1066(ウレタン衣料生地)
概要
ウレタン衣料生地とは、織物、編物、不織布を基布とし、ポリウレタンフォームをラミネートした生地のことです。ここでは、基布とポリウレタンフォームの接着強度を評価します。
試験方法
- ウレタンフォームをラミネートした生地から、約160mm×40mmを1前処理当たりたて方向6枚、よこ方向6枚を前処理用試験片として採取します。
- 前処理を行います。
- 石けん液法
洗濯堅ろう度(JIS L 0844)の洗濯試験機を用い、1項で採取した前処理用試験片3枚を40℃、0.5%石けん液、ステンレス鋼球20個の条件で30分間操作し、すすぎを行い乾燥させます。残りの前処理用試験片も同様に操作します。
- パークロロエチレン法
洗濯堅ろう度(JIS L 0844)の洗濯試験機を用い、1項で採取した前処理用試験片3枚を30℃、パークロロエチレン、ステンレス鋼球20個の条件で30分間操作し乾燥させます。残りの前処理用試験片も同様に操作します。
- 前処理後、25mm×150mmの大きさでたて方向、よこ方向それぞれ6枚ずつ試験片を採取します。
- 試験片の端から50mmを手ではく離させます。
- 自記記録装置付き定速伸長形引張試験機で、引張速度100mm/minで50mm間はく離させていきます。
- 自記記録装置で得られた極大値および極小値をそれぞれ3個ずつ取り、合計6個の値を平均し、たて方向、よこ方向におけるN=6の平均値を算出します。
試験結果例
試験項目
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試験結果 |
はく離強さ |
たて |
11N |
よこ |
10N |
試験方法: |
JIS L 1066
前処理;石けん液法
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試験結果の見方
はく離強さは数値が大きいほど強いことを意味し、目安値がないため比較試験として用いられます。
JIS L 1086(接着芯地・接着布)
概要
接着芯地とは、衣料品の型崩れや補強などのため襟、前立て、ウエストなどに用いられています。織物、編物および不織布に熱可塑性の接着剤がドット状などで付けられており、衣料品の生地と重ねた状態でアイロンやプレスで熱をかけて接着して使用され、その接着芯地の接着強度を評価します。。
接着布(ボンディング布)とは、織物、編物、レース、不織布、ウレタンフォームなどを接着した生地(接着芯地を除く)で、その接着布の接着強度を評価します。
試験方法
- しん地を接着した生地、または接着布から、25mm×150mmの大きさでたて方向、よこ方向それぞれ5枚ずつ試験片を採取します。
- 前処理を行う場合は、A法(水洗い洗濯機法)は約450mm×450mmの大きさを、B法(ウォッシュシリンダ法)は約250mm×250mmの大きさを採取して次の方法で処理します。
- A法(水洗い洗濯機法)
JIS L 1930のC4N法~C4H法にて処理します。
- B法(ウォッシュシリンダ法)
JIS L 1096のJ-1法(パークロロエチレン)またはJ-2法(石油系)にて処理します。
- 試験片の端から50mmを手ではく離させます。
- 自記記録装置付き定速伸長形引張試験機で、引張速度100mm/minで50mm間はく離させていきます。
- 自記記録装置で得られた極大値および極小値をそれぞれ3個ずつ取り、合計6個の値を平均し、たて方向、よこ方向におけるN=5の平均値を算出します。
試験結果例
試験項目
|
試験結果 |
はく離強さ |
たて |
3245cN |
よこ |
3050cN |
試験結果の見方
はく離強さは数値が大きいほど強いことを意味し、目安値がないため比較試験として用いられます。
補足
JIS L 1086(接着芯地及び接着布試験方法)とJIS L 1085(不織布しん地試験方法)のはく離強さについては、ほとんど同じ試験方法となります。
コラム
N(ニュートン)は荷重を表す単位で換算は次の通りです。