表面フラッシュ試験(JIS L 1917)

概要

 起毛を施した衣料品等に着火すると、炎が毛羽から毛羽へ急速に伝播し生地表面を炎が走るような現象が生じることがあります。これを「表面フラッシュ」と呼びます。毛羽は体積の割に表面積が大きく、空気との接触面積が大きいため、着火すると瞬時に完全燃焼します。炎は透明に近いので明るいところでは、ほとんど目立たず、気付くのが遅れると地組織にまで延焼し、思わぬ事故を招くことになります。起毛品の流行に伴って、表面フラッシュによる事故が発生していますが、安全性の面からの対応を迫られながらも、評価方法が確立されていませんでした。

試験装置

 表面フラッシュの試験機は唯一、英国規格に規定がありますが、この試験機ではフラッシュ発生の有無を見るだけで、表面フラッシュを定量的に評価できません。そこで、当センターは定量的に評価できる試験機を開発しました。その試験方法は妥当性が広く認められ、2000年10月にJIS規格に取り入れられ、JIS L 1917が制定されました。



繊維製品の表面フラッシュ燃焼性
対象製品
  • ホームウエア
  • パジャマ
  • セルロース系繊維使用起毛品
試験方法

前処理

 水洗い処理後の性能を評価する場合は、JIS L 1930 C4M法を行います。試験片を105±2℃の恒温乾燥器内に60分放置(熱による影響を受けるおそれのある試験片では、50±2℃の恒温乾燥機内に24時間放置)し、その後シリカゲル入りデシケーター中に30分放置します。

 

操作

  1. 試験片(たて400mm×よこ200mm)をデシケーターより取り出し、試験片支持枠に装着します。
  2. 毛羽方向の逆方向に、ブラッシング装置で3回ブラッシングします。
  3. 試験片をフラッシュ試験機に装着し、水平状態にしたバーナーの炎の長さを20mmに調整した後、0.5秒間接炎します。
  4. 接炎後、フラッシュ現象により100mm、200mm、300mmの高さにセットしたマーカ糸が切断した時間を計測します。

試験結果の見方
(一社)繊維評価技術協議会で定める評価区分
評価区分 測定結果
表面フラッシュなし 表面フラッシュ炎がマーカ糸取付位置100mmまで到達しない。
表面フラッシュあり ①表面フラッシュ炎がマーカ糸取付位置100mmまで到達するが200mmに到達しない。
②表面フラッシュ炎がマーカ糸取付位置200mmまで1秒以上かかって到達する。
表面フラッシュ著しい 表面フラッシュ炎がマーカ糸取付位置200mmに1秒未満で到達する。
コラム

表面フラッシュ試験に関する技術情報

  • セルロース系繊維には表面フラッシュの危険があります。
  • 合成繊維には表面フラッシュが起こりません。
  • 獣毛製品には「表面フラッシュもどき」とでも呼ぶ現象が見られる時があります。
  • 横方向にフラッシュする場合もあります。
  • 密な毛羽では生地本体に着火する恐れがあります。
  • 毛羽方向については、逆目のほうが表面フラッシュが起こりやすい傾向があります。
  • 洗濯が表面フラッシュに及ぼす影響は断定できません。
  • 火炎が200mm以上の高さに達し、200mmの高さに達する時間が1秒以内である試料は、フラッシュ現象による事故が発生する可能性が高いと考えられます。