繰り返し引張・圧縮動作に対する耐久性試験

概要

 様々な製品やそれに用いられる素材を繰り返して引っ張ったり、圧縮したりすると、思った以上に早く壊れてしまうことがあります。ここで紹介する試験は、製品や素材に対して引張・圧縮動作を試験装置により繰り返すことで耐久性を評価するものです。試験装置を用いることで、データの精度が向上し連続的な動作回数を設定することが可能です。
 

試験装置の特徴

   様々な製品の使用状況を想定して、以下の試験条件を任意に設定することが可能です。
項目 条件
荷重 最大荷重:1,000N
速度 最大速度:600mm/min
変位 ヘッド可動範囲:290mm
繰り返し回数 最大回数:65,535回

※検体の大きさ、使用治具、試験条件などにより、荷重、速度、変位は制限される可能性があります。

 繰り返し回数1回毎の荷重や変位を記録するため、途中経過のデータも確認できます。


金具の繰り返し引張試験
概要
 毎日使っていたバッグの金具が折れて使えなくなってしまった・・・このような場合は繰り返し引張試験で耐久性を評価できます。
対象製品
  • 金具類
試験方法

試験の実例1(引張最大荷重試験)

  1. ナスカンを試験装置に取り付けます。
  2. ナスカンが破断するまで引っ張ります。
  3. 破断した時の最大荷重を求めます。
 

試験の実例2(繰り返し引張試験)

  1. ナスカンを試験装置に取り付けます。
  2. 設定した荷重で繰り返し引っ張ります(試験方法動画を参照)。
  3. 破断するまでの回数や、繰り返したことによる外観の変化を確認します。

 
試験前のナスカン   試験後の破断したナスカン

試験結果例

試験の実例1(引張最大荷重試験)

 ナスカンを破断するまで引張最大荷重を測定したところ、189Nで破断しました。

試験の実例2(繰り返し引張試験)

 実例1と同じナスカンを100Nで繰り返し引っ張ると、347回目で破断しました。

試験結果の見方
 繰り返し引っ張ることで、弱い力でも破断する可能性があることがわかります
スナップボタンの繰り返し脱着試験
概要
 スナップボタンの着脱が緩くならないかを確認したい・・・このような場合は繰り返し脱着試験で耐久性を評価できます。
対象製品
  • スナップボタン
試験方法

試験の実例(繰り返し脱着試験)

  1. スナップボタンを試験装置に取り付けます。
  2. スナップボタンの脱着を繰り返します(試験方法動画を参照)。
  3. 繰り返された回数毎による荷重の変化や、試験前後の外観の変化を確認することができます。

試験結果例

試験の実例(繰り返し脱着試験)

 1000回脱着した後のスナップボタンを観察すると、バネの一部分が削られたことが確認できました。

 
ソケット(バネ)の試験前の状態   ソケット(バネ)の試験後の状態
試験結果の見方
 脱着を繰り返すことによりバネの摩滅が生じ、脱力および着力に影響を与えることがあります。
スマホストラップホルダーの繰り返し引張試験
概要
 スマホストラップホルダーを使い続けていると、樹脂の部分がちぎれるというクレームが発生した・・・
このような場合は繰り返し引張試験で耐久性を評価できます。
対象製品
  • スマホストラップホルダー
試験方法

試験の実例(繰り返し引張試験)

  1. スマホストラップホルダーを試験装置に取り付けます。
  2. スマホストラップホルダーを設定した荷重で繰返し引張ります(試験方法動画を参照)。
  3. 破断するまでの回数や、繰り返したことによる外観の変化を確認します。


試験結果例

試験の実例(繰り返し引張試験)

 スマホストラップホルダーを所定の荷重で繰り返し引っ張っると、284回で破断しました。

 また、スマホストラップホルダーを所定の荷重で1回引っ張ると、6mm樹脂部分が伸びましたが、破断した時の284回目では約2.7倍の16mmまで伸びていることがグラフから読み取れます。

 
スマホストラップホルダーの試験前   スマホストラップホルダーの試験後
試験結果の見方
 繰り返し引っ張る事で、樹脂部分が伸び、素材の強度が低下する可能性があることが分かります。
クッション材の繰り返し圧縮試験
概要
 新しいクッション材を開発したが、簡単にへたらないか、従来品と比較したい!・・・このような場合は繰り返し圧縮試験で耐久性を評価できます。
対象製品
  • クッション材
  • 緩衝材
試験方法

試験の実例(繰り返し圧縮試験)

  1. 緩衝材を試験装置に取り付けます。
  2. 緩衝材を設定した荷重で圧縮動作を繰り返します(試験方法動画を参照)。
  3. 試験後の破損や外観の変化を確認します。
試験結果例

試験の実例(繰り返し圧縮試験)

 緩衝材を所定の荷重で1回圧縮すると、最初の高さから27mm圧縮されましたが、1000回目では所定の荷重で29.5mmまで圧縮されていることがグラフから読み取れます。


試験前 試験後

無荷重時では、1000回圧縮動作を繰り返すと約7.5mmへたりが生じます。

試験結果の見方
 圧縮を繰り返すことにより、素材がへたる可能性があることが分かります。