厚生労働省の「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」では、JIS T 8125-2に適合又は同等以上の性能を有する保護衣を使用することになっています。また、2019年8月の労働安全衛生規則の改正により、チェーンソーによる伐木作業等を行う労働者は、下肢の切創防止用保護衣の着用が義務付けられています。
JIS T 8125-2の各種試験を実施し、その要求性能を満たした防護服を使用することは、林業従事者の安全性に寄与します。
種類 | デザイン | 防護領域 | タイプ選択時の参考情報(使用規定) |
---|---|---|---|
タイプA | ズボン及びレギンス※1 | 主に前面 | 訓練・指導を受けた専門伐採者による通常の林業作業 |
タイプB | チャップス※2 | 主に前面 | 手持ちチェーンソーを用いた不定期作業 |
タイプC | ズボン及びレギンス | 前後面 | 手持ちチェーンソーを頻繁に使用しない、例外的状況 |
※1:臀部は覆わず脚部を覆う形状のズボン
※2:脚部前面を覆い、腰と脚部の背面で固定して着用する防護服
デザイン(イメージ図) | ||
タイプA | タイプB | |
グレー部分は防護領域を示します。 |
||
タイプC |
防護範囲の測定は、製造者が提示した方法による洗濯後に寸法の計測を行います。JISで規定されている防護領域の寸法を満たしているかを測定します。
JIS T 8125-1 : 2022で規定する装置を使い、脚部防護服の切断試験をします。洗濯処理後の試験片を固定し、規定位置を20m/s(クラス1)のチェーン速度で切断します。タイプAとタイプBの防護服は前面の6か所を、タイプCは前面の4か所と後面の4か所の計8か所を切断します。試験後に試験片最内層の肌面に見える損傷(カットスルー)の有無を確認します。
切断抵抗性試験機 | 試験後の様子 |
JIS T 8125-2 : 2022による要求事項
切断抵抗性試験:カットスルーが生じないこと
回転しているチェーンソーを止めるために防護用挿入材が使用されます。防護用挿入材は表地と裏地の間に入っており、繊維・糸などが用いられています。
回転を停止させる方法は、防護用挿入材がソーチェーンの回転によりソーユニットに巻き込まれることで止める(クロッギング)、防護用挿入材がソーチェーンの速度を著しく落とし止める(ブレーキング)があります。
脚部防護服がエルゴノミクス(人間工学)の観点から満足できるものかを、被験者が所定の動作を行って評価する試験です。脚部防護服を着用した被験者が、左右の脚ごとに各種動作を行います。主な動作は次の通りです。
着用中の動作制限や不快感をスコア0(制限なし)からスコア4(著しく制限)の5段階に数値化し、平均スコアによって評価します。
ランジ姿勢 | 両膝をつく | 管をまたぐ |
JIS T 8125-2 : 2022による要求事項
エルゴノミクス反応の総平均スコア:2以下
防護用挿入材取付部を中心に引張試験機につかみ間隔50mmで取付け、JIS L 1093 A-3法(ISO法)のグラブ法にて1.5mm/sの速度で引っ張り、破断時の荷重を求めます。
脚部防護服は利用者の健康等に悪影響を与えないようにする必要があり、材料は毒性、発がん性、変異原性、生殖毒性がないものを使用します。JISに規定されている試験項目は次の通りです。
製造者が提示した方法による洗濯後に長さ、幅の寸法変化率を求めます。
JIS T 8125-2 : 2022による要求事項