花粉やダニ由来のタンパク質低減性試験(ISO 4333)

概要

アレルゲンと呼ばれる花粉やダニのフン・死骸が体内に入り込むと、アレルゲンを無毒化・排除すべき抗体が過剰に反応することで、アレルギー症状を引き起こすことがあります。

 

これらの花粉やダニのフン・死骸は、特定タンパク質とも呼ばれており、近年ではこの特定タンパク質を体内に取り込む前にそのアレルゲン性を発現させない(不活性化した)、「特定タンパク質低減加工剤」があります。この加工剤効果の一例としては、次のような仕組みになります。

  1. 環境空間中に特定タンパク質(アレルゲン)が浮遊
  2. 特定タンパク質が、特定タンパク質低減加工された繊維上で接触
  3. 特定タンパク質低減加工剤が、特定タンパク質を変性させ(不活性化させ)、アレルゲン性を低減


 

特定タンパク質低減加工された繊維製品を評価する方法として、2022年7月にISO 4333(Textiles — Determination of reduction activity of specific proteins derived from pollen, mite and other sources on textile products [繊維—繊維製品上の花粉、ダニ由来タンパク質などの減少度測定方法])が発行されました。この試験方法では、繊維製品の表面に存在する特定タンパク質の濃度測定が規定されており、人に対するアレルギー反応を評価することは規定されていません。


目的

 この試験方法は、繊維製品上で抗原抗体反応を示す、花粉やダニに由来するタンパク質を低減する度合いを測定します。


 

試験対象品
分野 用途
衣料品 コート、ズボン、スカート、ワイシャツ、ブラウスなどの外衣、中衣類
寝装 ふとん側地、マットレス、敷布、毛布、カバー類など
インテリア カーテン、カーペット類、椅子張地、ござ(イグサ製)など
雑貨類 帽子、マフラー、玄関マット、バスマットなど
自動車内装材

シート材(チャイルドシート含む)、マット類など


試験方法
ISO 4333


 

  1.  ポリエチレン袋に試験試料(5cm×5cmまたは0.4g)を入れ、特定タンパク質を1mL接種します。また同時にネガティブコントロール(陰性対照)として、ポリエチレン袋に試験試料がない状態で、特定タンパク質1mLを接種します。

     
  2. 25℃にて2時間静置します。
     
  3. 2時間後、試料を4つ折りにし、接種液を回収します(ネガティブコントロールは接種液のみを回収します)。
     
     
  4. ELISAにて、回収液中のタンパク質濃度を測定します。
     
     
  5. 以下の式により低減率を求めます。


    低減率(%)=( Rn-R)/Rn×100

     Rn:n=3のネガティブコントロールの特定タンパク質濃度(ng/mL)の平均値

     Rt:n=3の試験片から回収した特定タンパク質濃度(ng/mL)の平均値


※:ELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay・酵素結合免疫吸着測定法)

試験結果例
試験項目 試験結果
特定タンパク質低減率 原品 89%
洗濯5回後 70%
試験方法:

ISO 4333:2022

特定タンパク質;スギ花粉タンパク質(Cry j 1)

洗濯条件;JIS L 1930 C4G法吊干し(JAFET標準配合洗剤使用)

試験結果の見方

一般社団法人 繊維評価技術協議会によるSEKマーク繊維製品認証基準では、基準値は次の通りです。
 

 

特定タンパク質低減率≧70%


【注意】

  • この試験方法は、繊維製品上での特定タンパク質量を定量するものであり、人体への影響・病気の治療や予防を評価するものではありません。
  • 性能表示については、各都道府県自治体の薬務課等へご相談ください。
補足

繊維上の特定タンパク質を低減する加工に用いる試験対象タンパク質は、以下の通りです。

試験対象タンパク質 花粉由来 Cri j 1(スギ花粉 表層)
ダニ由来 Der f 1(コナヒョウヒダニ 排泄物)
ダニ由来 Der f 2(コナヒョウヒダニ 虫体)