マイクロプラスチックによる海洋汚染が社会問題となっています。繊維製品は、タイヤや塗料等と並び、マイクロプラスチック発生源の一つに挙げられています。繊維製品として身近な衣料品は、様々な外力により繊維が脱落したり千切られたりし、繊維の短い断片=ファイバーフラグメント(Fibre fragment)を発生させます。このファイバーフラグメントについて調べることが、繊維由来のマイクロプラスチック問題を理解することに繋がります。家庭においては、衣料品の洗濯によって排水中にファイバーフラグメントが発生しているものと想定されます。
生地の評価方法としてはAATCC TM212などがあり、製品の評価方法としてはISO 4484-3があります。
AATCC TM212では、生地から発生するファイバーフラグメント量を評価します。
ファイバーフラグメント脱落量
Fm,n = W2,n - W1,n
Fm,n:試験片nのファイバーフラグメント脱落量(g)
W1,n:試験前のフィルターと計量皿の質量(g)
W2,n:試験後のフィルターと計量皿の質量(g)
ファイバーフラグメント脱落率
Fp,n =100× (W2,n - W1,n) / S1,n
Fp,n:試験片nのファイバーフラグメント脱落率(%)
W1,n:試験前のフィルターと計量皿の質量(g)
W2,n:試験後のフィルターと計量皿の質量(g)
S1,n:試験前の試験片の質量(g)
試験項目 | 試験結果 |
---|---|
ファイバーフラグメント脱落量 | 0.0024 g |
ファイバーフラグメント脱落率 | 0.0126 % |
試験方法: |
AATCC TM212 洗浄オプションB 乾燥オプションA |
試験試料を加速洗濯試験機にて洗浄する場合、および計量皿+フィルターを乾燥する場合は、下表のオプションを選択することができます。
オプション | 処理方法 |
---|---|
洗浄オプションA | 洗剤溶液(0.25% AATCC洗剤WOB) |
洗浄オプションB | 水のみ |
乾燥オプションA | 21±2℃、65±5%RH×4時間以上 |
乾燥オプションB | 非空気循環オーブンにて70℃×1時間以上 |
【欧州 Cross Industry Agreement】(https://euratex.eu/cia/)
マイクロプラスチック(ファイバーフラグメント)問題について、科学的根拠に基づき、対策の検討や正しい情報発信をおこなうことを目的として、欧州CIAは設立されました。欧州繊維産業連盟(EURATEX)、欧州化繊協会(CIRFS)、欧州アウトドアグループ(EOG)、欧州スポーツ用品産業連盟(FESI)、国際石鹸洗剤及び清掃用品協会(AISE)の業界横断的な5団体が中心となる対策検討グループです。
日本からは、日本繊維産業連盟、日本化学繊維協会、当センターが参画しています。
繊維業界におけるマイクロプラスチック対策を議論する中で、用語の問題がありました。それは、マイクロプラスチックの原因となる繊維を、マイクロファイバー(Microfibre)と呼称される例が見受けられたことです。本来、マイクロファイバーとは、直径が極めて細い繊維を指すものです。先のような呼称が広がると、マイクロファイバー製品への誤解を招くことが懸念されます。海外でも同様に、用語の混同について問題視されてきました。
誤認や混乱を避けるために、欧州 Cross Industry Agreementにて、用語の統一化がなされ、マイクロプラスチックの問題となる繊維をファイバーフラグメント(Fibre fragment)と呼ぶこととしました。これら用語の整理も含め、欧州CIAは、欧州の繊維業界のマイクロプラスチック問題への取組みと海洋汚染の実態などについてのリーフレットを公開しています。
参考文献
(日本繊維産業連盟では、著作権者Cross Industry Agreementの了解の下、日本語の暫定訳を掲載しています。)
Less Micro Plastic認証試験では、生地から発生するファイバーフラグメント量を評価します。
ISO 4484-3では、製品から発生するファイバーフラグメント量を評価します。
A形基準洗濯機 | C形基準洗濯機 |
排水時、フィルターバッグで捕集している様子 |
捕集されたファイバーフラグメント |
試験項目 | 試験結果 |
---|---|
製品1着あたりのファイバーフラグメント量 | 74 mg/着 |
単位重量あたりのファイバーフラグメント量 | 194 mg/kg |
試験方法: |
ISO 4484-3 C形基準洗濯機使用 |