磁石及び磁石を使用した製品に対する試験

概要

 ニュースなどで小さなお子様が磁石を誤って飲み込んでしまったことによる痛ましい事故をご覧になったことはないでしょうか?海外では死亡事故も発生しており、充分な注意が必要です。
 日本においては、強力な磁力を持ったマグネットセットをこどもが誤飲したことにより、複数の磁石同士が消化管壁を挟み込み、消化管壁に穴があき開腹手術が必要となった事故が発生しています。このような事故を防ぐため、2023年5月19日に「消費生活用製品安全法施行令の一部を改正する政令」が公布され、消費生活用製品安全法の特定製品に磁石製娯楽用品が追加されました。
 この法規制には、ISO 8124-1(玩具の安全性-機械的および物理的特性に関連する安全面)の規定が用いられています。


 ISO 8124-1は、対象年齢14才未満の玩具に対する玩具安全性の国際規格であり、機械的特性及び物理的特性の要求事項が収められています。磁石および磁性部品を使用する玩具(8歳以上の子供向けの磁力または電気実験セットは除く)もこの規定の中に収められています。

 ここでは、ISO 8124-1に規定された試験を紹介します。


磁束指数測定
試験方法

1. ガウスメーターのプローブ先端を磁石の極の表面または磁性部品の表面に接触するように位置させます。

2. プローブと極の表面が直角をなすように保持します (図)。

3. 磁束密度の最大絶対値を特定します。

4. 測定した磁石の極の表面積を計算します。

5. 磁束指数は、磁石の極の表面積(mm2)に最大磁束密度の2乗(kG)2を掛けて計算されます。

図:磁束指数測定のイメージ
補足

磁束指数とは


 誤飲した複数の磁石同士、あるいは磁石と金属(鉄、ニッケルなど)が消化管壁を挟んで互いに引き付け合うリスクは磁石の強さによると考えられており、次の計算式による磁束指数という単位が導入されています。


 磁束指数((kG)2・mm2)={最大磁束密度(kG)}2×極の表面積(mm2)


 仮に磁石または磁性部品を誤飲した場合でも、体外に自然排出される水準の磁力であるかを判断するために、磁束指数が50(kG)²・mm²未満であることが指標となっており、各国で採用されています。

小部品試験
試験方法

 小部品シリンダーと呼ばれる、乳幼児が誤飲する恐れのある大きさを判別する試験器に、圧縮しない状態かつ任意の方向で、完全に収まるかどうかを確認します。完全に収まる場合、乳幼児が誤飲する恐れがある大きさです。

 

 
小部品シリンダー
大きさをイメージしやすいように、単4形の電池が完全に収まった状態を写しています。
磁石の濫用試験
試験方法

 玩具を購入した時、磁石および磁性部品が安全な状態であったとしても、引っ張ったり落としたりすることで磁石または磁性部品が放出されてしまい、飲み込んでしまう恐れがあります。そのため、濫用試験(決められた手順で、磁石の引張試験、落下試験、トルク試験、引張試験、衝撃試験、圧縮試験などを実施)を行い、磁石または磁性部品が放出されるかどうかを確認します。


 磁石または磁性部品が放出された場合は、磁束指数の測定および小部品試験を実施します。

試験結果の見方

ISO 8124-1の要求事項:

  • 磁束指数50(kG)2・mm2未満、または小部品シリンダーに完全に収まらないこと
  • 濫用試験によって磁石または磁性部品が放出された場合は、磁束指数50(kG)2・mm2未満であるか、小部品シリンダーに完全に収まらないこと

 磁束指数の測定、小部品試験、磁石の濫用試験や、玩具以外の規格に準じた試験については、次の試験室までお問い合わせください。

 

大阪事業所キャラクターグッズラボ

TEL: 06-6441-6756

e-mail: osaka-zakka-ml@kaken.or.jp