有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律<昭和48年・法律112号>

 ここでは、繊維製品の加工剤に含まれる可能性のある有害物質を規制する国内の各法令についてご紹介します。まずは「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」(このページの以下で「法」といいます)です。

(昭和四十八年十月十二日法律第百十二号)
最終改正:平成一五年五月三〇日法律第五五号

【目的】

  1. この法律は、有害物質を含有する家庭用品について保健衛生上の見地から必要な規制を行なうことにより、国民の健康を保護することを目的としています(法 第1条)。

【定義】

  1. この法律における「家庭用品」とは、主として一般消費者の生活の用に供される製品(※)をいいます(法 第2条第1項)。
  • 食品衛生法に規定する食品、添加物、器具、容器包装、おもちゃ、洗浄剤
  • 薬事法に規定する医薬品、医薬部外品、医療機器
  • その他、政令等で定める法律の規定によって、製造、輸入または販売を規制されており、かつ有害物質による人の健康に係る被害が生ずるおそれがないと認められる製品で、政令の定めるもの

(※)ただし以下のものは除きます。

  1. この法律における「有害物質」とは、家庭用品に含有される物質のうち、水銀化合物その他の人の健康に被害を生ずるおそれがある物質として政令で定める物質をいいます(法 第2条第2項)。

具体的には、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律 第2条第2項の物質を定める政令」の項で説明します。

【事業者の責務】

  1. 事業者は、家庭用品に含有される物質の人の健康に与える影響を把握し、その含有物質により人の健康に係る被害が生ずることのないようにしなければなりません(法 第3条)。
【家庭用品の基準】
  1. 厚生労働大臣は、保健衛生上の見地から、厚生労働省令で特定の家庭用品を指定し、その家庭用品について有害物質の含有量や発散量等に関して必要な基準を定めることができます(法 第4条第1項)。

現在までに20物質が規制されています。詳しくは「有害物質を含有する家庭用品の規制の関する法律施行規則」の項で説明します。

  1. 厚生労働大臣は、保健衛生上の見地から、厚生労働省令で毒物及び劇物取締法に規定する毒物または劇物(※)である有害物質を含有する家庭用品を指定し、その家庭用品の容器または被包に関し、必要な基準を定めることができます(法 第4条第2項)

※毒物及び劇物取締法 第2条第1項及び第2項規定の物質で、四アルキル鉛、無水クロム酸、ホルムアルデヒド、ディルドリン、重クロム酸、砒素弗化水素等、120種以上(別に政令で定めるものを含む)あるため、全てを掲載できませんが、事業者の方々にとって重要と思われます。

【販売等の禁止】

  1. 事業者は、その基準に適合しない家庭用品を販売、授与、またはそれらの目的のための陳列をしてはなりません(法 第5条)。

【回収命令等】

  1. 厚生労働大臣または都道府県知事(保健所を設置する市または特別区では、市長または区長)は、事業者が、その基準に適合しない家庭用品を販売し、または授与したことにより、人の健康に被害が生ずるおそれがあると認める場合において、被害の発生を防止するため特に必要があると認めるときは、その事業者に対し、当該家庭用品の回収を図ること、その他必要な措置をとるべきことを命ずることができます(法 第6条第1項)。
  2. 厚生労働大臣または都道府県知事(保健所を設置する市または特別区では、市長または区長)は、家庭用品が原因で人の健康に重大な被害が生じた場合において、人の健康に被害を生ずるおそれがある物質が含まれている疑いがあるときは、当該被害の拡大を防止するため必要な限度において、事業者に対し、家庭用品の回収を図ること、その他被害の拡大を防止するために必要な応急の措置をとるべきことを命ずることができます(法 第6条第2項)。

【立入検査等】

  1. 厚生労働大臣または都道府県知事(保健所を設置する市または特別区では、市長または区長)は、必要があると認めるときは、事業者に対し、必要な報告をさせ、または厚生労働省令で定める職員のうちからあらかじめ指定する者(家庭用品衛生監視員)に、当該事業者の事務所、工場、事業場、店舗もしくは倉庫に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、関係者に質問させ、もしくは試験に必要な限度において当該家庭用品を収去させることができます(法 第7条)。

【罰則】

  1. 【販売等の禁止】の内容の規定に違反したとき、または【回収命令等】の内容の規定による命令に違反したときは、一年以下の懲役または三十万円以下の罰金に処されます(法 第10条 第1号及び第2号)。
  2. 【立入検査等】の内容の規定による報告をせず、もしくは虚偽の報告をし、規定による検査もしくは収去を拒み、妨げ、もしくは忌避し、または規定による質問に対して答弁をせず、もしくは虚偽の答弁をしたときは、五万円以下の罰金に処されます(法 第11条)。

  3. 法人の代表者または法人もしくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人または人の業務に関し、上記2項の違反行為をしたときは、行為者が罰せられるほか、その法人または人に対しても罰金刑が科せられます(法 第12条)。

有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律 第2条第2項の物質を定める政令

 ここでは、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」の項でご紹介した第2条第2項の物質を具体的に定めた政令について述べます。

(昭和四十九年九月二十六日政令第三百三十四号)
最終改正:平成一六年三月一七日政令第四〇号

  1. 塩化水素
  2. 塩化ビニル
  3. 4,6-ジクロル-7-(2,4,5-トリクロルフェノキシ)-2-トリフルオルメチルベンズイミダゾール
  4. ジベンゾ[a,h]アントラセン
  5. 水酸化カリウム
  6. 水酸化ナトリウム
  7. テトラクロロエチレン
  8. トリクロロエチレン
  9. トリス(1-アジリジニル)ホスフィンオキシド
  10. トリス(2,3-ジブロムプロピル)ホスフェイト
  11. トリフェニル錫化合物
  12. トリブチル錫化合物
  13. ビス(2,3-ジブロムプロピル)ホスフェイト化合物
  14. ヘキサクロルエポキシオクタヒドロエンドエキソジメタノナフタリン(別名 ディルドリン)
  15. ベンゾ[a]アントラセン
  16. ベンゾ[a]ピレン
  17. ホルムアルデヒド
  18. メタノール
  19. 有機水銀化合物
  20. 硫酸
(繊維製品と特に関係が深い物質は赤い字で表示しています。)
 現在、上記の20物質が対象となっています。これらの物質は、それぞれ「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律 施行規則」によって許容基準が定められています。

有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律 施行規則<昭和49年・厚生省令第34号>

 ここでは、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律 第2条第2項の物質を定める政令」の項で紹介した物質のうち特に繊維製品との関係で注意する必要があると思われるものについてご紹介します。

有害物質用途対象となりうる繊維製品基準毒性
有機水銀化合物防菌防カビ剤繊維製品のうち下着、靴下、手袋、おしめ、おしめカバー、よだれ掛け、衛生バンド、衛生パンツ検出しないこと(1ppmを超えてはならない)神経障害(視聴覚障害、運動失調、言語障害など)、潰痕を伴う強い皮膚変質
ホルムアルデヒド防しわ樹脂加工剤防腐剤(接着剤用)繊維製品のうち

1.生後24ヶ月以下の乳幼児が使用する次のもの(おしめ、おしめカバー、よだれ掛け、下着、寝衣、手袋、靴下、中衣、外衣、帽子、寝具)

2.下着、寝衣、手袋、靴下(生後24ヶ月以下の乳幼児用を除く)
1.については検出しないこと(吸光度0.05以下)
2.については75ppm以下(試料1g当り30μg以下)
粘膜刺激、皮膚アレルギー
ディルドリン防虫加工剤繊維製品のうちおしめカバー、下着、寝衣、手袋、靴下、中衣、外衣、帽子、寝具及び床敷物、家庭用毛糸30ppm以下(試料1g当り30μg以下)肝機能障害、中枢神経障害
トリス(1-アジリジニル)ホスフィンオキシドAPO防炎加工剤繊維製品のうち寝衣、寝具、床敷物、カーテン検出しないこと経皮・経口急性毒性、造血機能障害、生殖機能障害
トリス(2,3-ジブロムプロピル)ホスフェイトTDBPP防炎加工剤繊維製品のうち寝衣、寝具、床敷物、カーテン検出しないこと発がん性
トリフェニル錫化合物防菌防カビ剤繊維製品のうちおしめ、おしめカバー、よだれ掛け、下着、衛生バンド、衛生パンツ、手袋、靴下検出しないこと皮膚刺激性、経皮・経口急性毒性、生殖機能障害
トリプチル錫化合物防菌防カビ剤繊維製品のうちおしめ、おしめカバー、よだれ掛け、下着、衛生バンド、衛生パンツ、手袋、靴下検出しないこと皮膚刺激性、経皮・経口急性毒性
ビス(2,3-ジブロムプロピル)ホスフェイト化合物防炎加工剤繊維製品のうち寝衣、寝具、床敷物、カーテン検出しないこと発がん性
DTTB(4,6-ジクロル-7-(2,4,5-トリクロルフェノキシ)-2-トリフルオルメチルベンズイミダゾール)防炎加工剤繊維製品のうちおしめカバー、下着、寝衣、手袋、靴下、中衣、外衣、帽子、寝具及び床敷物、家庭用毛糸30ppm以下(試料1g当り30μg以下)経皮・経口急性毒性、肝臓障害、生殖機能障害

 安全性に対する関心が高まってきていますが、衣料品などの繊維製品は肌へ与える影響を考慮して、”生地のpH”について基準(中国のGB規格、韓国のKCマークなど)が設定されていることがあり、その場合、中国内販向けの対象となる製品では試験が必要となってきます。
 ”生地のpH”と書きましたが、実際には生地を水(または塩化カリウム溶液)に侵漬し、振とう処理して得られた抽出液のpHを測定します。

繊維製品の加工剤に関する行政指導

 ここでは、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律 施行規則」の内容に関連する行政指導についてご紹介します。
 行政指導とは、行政機関が一定の行政目的を達成するために、助言や指導等の法的強制力をもたない手段により、個人や企業、団体などに対して任意の協力を求める行為をいいます。

加工の種類行政措置局長通達
ホルマリン樹脂加工繊維製品中の遊離ホルムアルデヒド量

・上衣類:0.10%以下
・中衣類:0.03%以下
・下着類:残留しないこと

ⅰ測定方法はJIS L 1041「樹脂加工織物及び編物の試験方法」で規程する5.2(1.2.2)アセチルアセトン法(B)による。
ⅱ現在この通達は、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律で規制されているものを除いたものに適用されている。
47繊局第567号(昭和47年7月20日)ホルマリン樹脂加工について51生局第483号(昭和51年10月12日)「ホルマリン樹脂加工製品の遊離ホルムアルデヒド量の測定について」より一部改正
けい光増白加工①必要最小限の加工にとどめ、付着量が過度にならないよう注意すること。

②乳幼児用製品については、できる限り加工をさけること。

③洗たくに対する堅ろう性を向上させるよう努力すること。
48生局第289号(昭和48年11月24日)けい光増白加工及び難燃加工について
難燃加工①必要最小限の加工にとどめ、付着量が過度にならないよう注意すること。

②家庭用品品質表示法により、表示すべき事項として難燃性が指定されている製品(敷物、カーテン類)にあっては定められた表示方法によりその旨表示を行い、水などによって容易に脱落する難燃剤を使用する場合は、さらにその旨付記することにしているので、その徹底を図るほか、他の繊維製品にあっても極力その旨表示を行うこと。

③乳幼児用製品については、できる限り加工をさけること。洗たくに対する堅ろう性を向上させるよう努力すること。
柔軟加工①必要最小限の加工にとどめ、付着量が過度にならないよう注意すること。

②吸水性能を特に必要とする繊維製品への加工には十分注意すること。
49生局第556号(昭和49年8月20日)柔軟加工及び衛生加工について
衛生加工①人体への安全性に疑義のある衛生加工剤の使用は自粛すること。

②有効な加工処理を行っていない製品の衛生加工剤問う等の表示は行わないこと。

【詳細】

1. 蛍光増白加工及び難燃加工について
  1.  蛍光増白加工を行う場合には、必要最少限度の加工にとどめ、付着量が過度となるいわゆる過剰加工にならないよう十分注意を払うこと。
  2. 難燃加工を行う場合には、必要最少限度の加工にとどめ、過剰加工とならないよう十分注意するとともに、家庭用品品質表示法により、表示すべき事項として難燃性が指定されている製品(敷物、カーテン及びカーテン地)にあっては、定められた表示方法によりその旨の表示を行ない、水などによって容易に脱落する難燃剤を使用する場合は、さらにその旨付記することとしているので、その徹底を図るほか、他の繊維品にあっても極力その旨表示を行なうこと。
  3. 上記両加工を通じて乳幼児用製品については、できる限り加工をさけること。
  4. さらに、各種加工について、洗たくに対する堅ろう性を向上させるよう努力すること。

(通産省通達 昭和48年11月24日 48生局第289号)

2. 柔軟加工及び衛生加工について

  1. 柔軟加工を行う場合には当該繊維製品の用途等を考慮し、必要最少限の加工にとどめ、加工剤の繊維品への付着量が過度となるいわゆる過剰加工にならないよう注意するとともに吸水性能を特に必要とする繊維品への加工には十分注意を払うこと。
  2. 衛生加工を行う場合には、人体への安全性に疑義のある衛生加工剤の使用は自粛すること。なお、有効な加工剤処理を行っていない製品の衛生加工済等の表示は行わないこと。

(通産省通達 昭和49年8月20日 49生局第559号)

Q & A

【Q1】

 ホルムアルデヒドを含有していない乳幼児用の繊維製品が、ホルムアルデヒドを含有する他の製品と積み重ねられて置かれた場合などに、ホルムアルデヒドがその乳幼児用繊維製品に移染して基準値をオーバーした場合は、基準違反として取り扱われるのでしょうか。

【A1】

 製造時に有害物質が含まれていない製品であっても、その後における工場や倉庫での積み重ね、輸送時の荷造り、あるいは販売時におけるベビー用品コーナーの隣接売場からの空気移染等の要因によって、有害物質が移染される恐れがあります。
 こうした移染による場合であっても基準違反には変わりありませんので、『有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律』第5条の禁止規定の適用を受け、基準違反の製品を販売した場合、同法に規定する罰則が適用される可能性があります。

移染を防ぐための対策としては、

  • 製品をポリエチレンの袋に入れる
  • 乳幼児用製品を規制対象外の製品のそばに置かない

などが挙げられます。