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獣毛のDNA鑑別方法の調査検討

家庭用品品質表示法の改正や消費者の嗜好の変化によりこれら獣毛繊維の鑑別技術の重要性は高まってきていると考えられます。

しかし、全世界的にも従来の顕微鏡下による形態観察による目視鑑別が行われており、それ以外の鑑別方法で実用的な鑑別技術は殆ど無い状況です。一部では電子顕微鏡の併用による鑑別法や アミノ酸分析など分析機器による鑑別などが検討されているようですが、電子顕微鏡併用による目視鑑別は、基本的に形態観察の域からは出ることは出来ません。またアミノ酸分析による鑑別はアミノ酸分解過程によるバラツキや、生育環境(気候や餌など)によるバラツキなども予想されるのでかなり困難であることが予想されます。

従って科学的根拠の明確な鑑別技術はDNA分析による獣毛繊維の鑑別であると思われます。


試験・分析方法 現状と特徴
顕微鏡法 広く世界で用いられている方法である。
測定者による差異が生じる場合がある。
手間がかかり、熟練を要する。
繊維表面を鑑別の手がかりにしているので、繊維表面に加工を施されるなどした場合、鑑別が困難になる。
画像処理法 画像の入力方法に工夫が必要である。
人間の目視による鑑別の代行なので、繊維表面形状が変化した場合などには、同様に鑑別が困難になる。
近赤外分光法 スペクトルバンドの帰属が不明確である。
特定条件下での鑑別のみ可能である。(染料等の影響がない場合)
化学分析(アミノ酸分析) アミノ酸に分解する過程そのものに、ばらつきを生じさせる原因がある。
生育環境などの履歴が反映されやすい。
その他化学反応性などを利用した方法 細胞膜脂質の組成による分析。(HPLCを用いた細胞膜脂質の組成を比較し鑑別する)
繊維に含まれている微量の無機成分による分析。(種による違いよりも生育環境などが反映され、また種の特定に一意的な普遍性がないと思われる)
Agイオンの吸着性による分析。(カシミヤは他の獣毛と比較して低い吸着性を示すが、その根拠・メカニズムが不明である)

試験の概要


DNA分析による獣毛繊維の鑑別の対象とした獣毛は、ウシ種(ヤク)・らくだ種(キャメル)・ヤギ種(カシミヤ)およびヒツジ種(ウール)です。これらの生物学的な関係は以下の系統樹に示します。


生物学上の系統樹

DNA分析による獣毛繊維の鑑別方法における問題は、対象とする獣毛繊維からDNAを抽出できるかという点です。

そこで獣毛繊維からDNAの抽出を試みたところ、鑑別に利用できるグレードのDNAの抽出に成功し、またそれを利用したDNA鑑別方法も確立しました。このDNA分析による獣毛繊維の鑑別方法における技術的なポイントは、DNAの抽出技術、種特異的な塩基配列部分の特定および選定、およびDNAの増幅技術です。

DNAによる獣毛鑑別の手順を以下に示します。


獣毛鑑別手順

DNAによる獣毛鑑別の成功例は本報告を含めて世界で2例確認されています。しかし同一種内(例えば同じ山羊種内でのアンゴラとカシミヤなど)での鑑別は難しく、成功した例は報告されていません。

この方法は、科学捜査などでも利用されている鑑別手法と同一です。従ってDNAが抽出され増幅に成功すればかなりの確率で鑑別する事が可能です。


捕捉:獣毛の特徴


羊毛

【羊毛】

羊毛市場では大ざっぱにメリノ種と雑種とに大別されていますが、ときに雑種のうちカムバック種を区別する場合もあります。専門的に分類すれば一般市場に見られるだけでも数十種類を越えます。太さは、メリノ羊毛で0.018〜0.023mm、雑種羊毛で0.024〜0.042mmぐらいです。



カシミヤ

【カシミヤ】

これは一種のヤギの毛で、このヤギはヒマラヤ山中、北部インド、モンゴル、チベットなどで飼育されています。このヤギには2種の毛が混生していて、からだ表面に現れている毛は太くて粗硬なヘヤーですが、その毛の根本に近い部分の短い毛がいわゆるカシミヤです。太さは、0.012〜0.020mmぐらいです。



キャメル

【キャメル】

ラクダにはアジア系の双峰ラクダとアラビア系の単峰ラクダがありますが、毛を採るのは前者が主です。太さは0.015〜0.030mmぐらいです。



モヘヤ

【モヘヤ】

これはアンゴラヤギという一種のヤギの毛で、主な産地はトルコ及び南ア共和国ですが、現在はアメリカおよびオーストラリアの一部にもこのヤギが移植されています。光沢は著しく強く、あたかも絹のような光沢があります。太さは、0.03〜0.05mmぐらいです。

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